グーグル検索でも見つからない、暗号で書かれた本の秘密とは? アナログとデジタルがぶつかり合う、壮大な謎解き物語!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

スマホやパソコン、電子書籍端末などで、世界中の情報や商品が手に入るのが当たり前のこの時代。最新の端末が出れば店には行列ができ、その技術の結晶に心をときめかせる。しかし画面の中の世界に夢中になると同時に、アンティークや書籍、実在する店舗などにも魅力を感じずにはいられない。この両極にあると思われる2つが対立したら、勝つのはどちらなのだろうか? 勝負はつくのだろうか? そんな伝統と最新技術の戦いを見せてくれるのが、『ペナンブラ氏の24時間書店』(ロビン・スローン:著、島村浩子:訳/東京創元社)。本書は、とある書店に置かれた本の暗号を巡って、500年前のアナログと最新デジタルがぶつかり合う物語である。

<あらすじ>
失業し、就職先を求めていた主人公 クレイ・ジャノンは、“二十四時間書店”という一風変わった書店で働くことになった。そこには一般客に向けて販売されている本とは別に、梯子付きの高い高い書棚に、会員向けの貸出専用の本が多く置かれていた。その本はISBN(世界共通の書籍コード)がなく、google検索にもかからない。何やら秘密がある本らしい。クレイは、見てはいけないと言われていたそれらの本を、友人と共に見てしまう。そこには、解読不能な謎の暗号が書かれていた。クレイ達はその暗号の解読を試みるが、それは500年越しの謎を解き明かす旅の始まりだった――。

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解読チームの仲間となった、グーグラーのキャット・ポテンテ。キャットはグーグルの持つあらゆる手段を駆使して、この解読に協力した。しかしこの謎は、思わぬところから解かれる。最強だと思われたグーグルの、そしてグーグラーの解析をくぐり抜けた暗号は、古典的で単純なものだった。この物語は、古いものも新しいものもどちらも大事であるということを改めて教えてくれる。先へ先へと進もうとしていると、思いがけない見落としがあったりするし、伝統という名のもとに同じことを続けているだけでは新しいものは見えてこない。

現実世界で、ここまで不思議で現実離れした謎に挑むことはなかなかないかもしれない。しかし、どうしても挑戦したい何かにぶつかることもある。そんな時、本書の現実的かつファンタジーな発想は、非常に役に立ってくれそうだ。「木を見て森を見ず」、「灯台もと暗し」などの言葉と共に、この本に出てくる知恵や思考法、仲間の大切さや“立ち返る”ということの大切さを忘れずにいたい。

文=月乃雫