画業50周年のながやす巧 『壬生義士伝』が待望の連載再開!

マンガ

公開日:2014/6/15

 ファン待望! ながやす巧の『壬生義士伝』の第3章が、4月に創刊された雑誌『画楽.mag』にてスタートした。浅田次郎原作による、家族への愛のために新選組の隊士となった吉村貫一郎の物語であるが、ながやすの写実的かつ迫力の筆致は圧巻だ。

 今年で画業50周年を迎えるながやす巧は、デビュー以降、アシスタントを使ったことがないという。どんな細かな背景も、モブシーンの人物一人一人にも、自らペンを入れているのだ。それゆえ、かかる時間も膨大であるというが、描かれたものには、どんな小さな草木にだって命が宿っている。その場の温度や匂いまでをも感じられるのだ。

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 例えば、『壬生義士伝』の冒頭カラーページ。鳥羽伏見の戦いにて深手を負った吉村が、雪の中を歩く場面から始まるのだが、吉村が流している血には、時間の経過がきちんと感じられる。乾いて少し固まった血の表現が、吉村の死闘を何よりも雄弁に物語っているのだ。また、単にリアリティが追求されているわけではない。マンガとしての省略の緩急やコマ割りなども絶妙で、緻密なのに、非常に読みやすいのだ。

 そんなながやすの真骨頂とも言える『壬生義士伝』の1~4巻は、第3章開始にあたり、ホーム社から刊行し直されている。書店で手に入りやすくなった今、未読の方はぜひ読んでほしい。マンガ表現のさらなる高みを知るはずだ。

文=倉持佳代子/ダ・ヴィンチ7月号「出版ニュースクリップ」