夏目漱石、小泉八雲…、文豪がこよなく愛したカレーとは?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

綾瀬はるかが表紙を飾る『ダ・ヴィンチ』7月号の巻頭特集は、「禁断の最終決戦! 本VS.カレー」。本とコミックの情報誌がカレー特集とはこれいかに? というか、カレーと本ってなんの関係があるの? そんなふうに疑問に思う人もいるだろう。しかし書店がひしめく東京の古書街・神保町に、カレーの名店が立ち並んでいるのは周知の事実。本が好きな人は、カレーも好きなのでは? ということで、作家たちが愛してやまないカレー、小説やマンガに登場するカレーの再現など、本とカレーライスの美味しい関係を探ってゆく。ほかにも吉木りさ、斎藤工が「カレーグラビア」を飾るなど、見ごたえたっぷりの同特集。ここではまず、「文豪とカレー」の意外な関係性についてご紹介。

大正時代、柳宗悦とその妻・兼子が作ったカレーを白樺派の文人たちは食べていたという。志賀直哉が通った熱海の洋食屋「スコット」、池波正太郎がこよなく愛した渋谷の「ムルギー」など文豪とカレーの関わりは深い。高校時代、神保町の古書店街を回っていて「ボンディ」のカレーに出会い、衝撃を受けて以来、“本とともにカレーがある”人生を送ってきたという『幽』編集長・東雅夫氏は、こう語る。

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「“文豪とカレー”といえば、名著『怪談』で知られる小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)。彼の蔵書を収蔵する富山大学のヘルン文庫が『ラフカディオ・ハーンのクレオール料理読本』をもとに再現した「ガンボ」という料理は、富山で今『小泉八雲のスープカレー』として商品化されています。八雲はギリシアで生まれ、各国を転々として日本にたどりついた人ですが、はじめて仕事と居場所を得た米国南部のニューオーリンズをとても愛していました。そこで出会ったクレオール料理は、フランス、スペイン、アフリカ、アメリカなどの味が融合された移民文化の産物。自身もギリシアとアイルランドのハーフである八雲は、クレオール料理に強い関心を抱き、レシピを集めて書き残したのです。まさか1世紀余を経た日本で、それが自分の名前を冠して発売されようとは想像もしなかったでしょうね。
夏目漱石も、イギリス留学の経由地スリランカで地元のライスカレーを食べたと旅日誌に記しています。これはイギリスで普及したカレーのルーツにあたる植民地のごった煮料理。八雲のガンボと似ているでしょう。八雲が東大英文科講師を辞めたとき、後任となって苦労したのが漱石で、両者の人脈には共通するところが多い。漱石にも怪談文芸の名作『夢十夜』がありますし、なにかと通ずるところの多い二人が、カレーの話題でも俎上にのぼるというのは、因縁の深さを感じますね。
独りで食べやすく手軽なカレーというのは、研究や執筆に没頭する文学者にはうってつけの料理なのかもしれません」

取材・文=立花もも/ダ・ヴィンチ7月号「禁断の最終決戦 本VS.カレー特集」