トイレの花子さんは時代遅れ? いまどきの学校の怪談とは

マンガ

公開日:2014/6/18

 学校の怪談といえば、思い浮かぶのはトイレの花子さんや動く人体模型、上半身だけで這い回るテケテケといったものだろう。しかし、そんな“怪談”たちは、もはや時代遅れだというのだ。そして、『怪談イズデッド』(飯島しんごう/講談社)では、子供たちが肝試しをしなくなり、学校の怪談の噂話もしなくなったことに危機感を抱いた“怪談”たちが、自ら新たな怪談を考えたりしている。そんな今どきの怪談とは、どういったものなのだろう?

 勤勉の象徴として、かつては校門のそばにあることも多かった二宮金次郎の銅像。舞台となる菊原小学校では、毎日4時44分になるとこの二宮像の目が光るというというのが七不思議のひとつになっていた。しかし、保護者から「歩きながら本を読むのを真似されたら危険」という批判が相次ぎ、とうとう撤去されてしまう。そして、この「魂宿る二宮像」が撤去された代わりに怪談たちが提案したのは、「PC室の動画」だ。これは、とあるアカウントでログインすると観られる動画で、それを観た者に死が訪れるというもの。たしかに、ネットが普及して小学生でもスマホやパソコンを扱う機会が増えた現代なら、ぴったりの怪談に思える。

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 また、下校する生徒を襲い、目があった相手をボロボロになるまで引きずり殺す「恐怖のヒキコさん」のライバルとして現れたのは「FGさん」という変質者の怪談。この“FG”とは「フルチンジジイ」の略らしく、ロングコートと靴だけを身にまとい、子どもたちに裸を見せつけては、「くぅぅぅたまんねぇぇ! いい声で叫びやがるぜー!!」と興奮する。そして、あまりにも捕まらない彼に対して、子どもたちが「時速100キロで走るらしい」とか「屋根の上ジャンプして移動してる」、「見た目がもう人間じゃねー」と噂するおかげで、日に日にたくましく成長していく。でも、決して捕まらない変質者の怪談なんて、恐ろしすぎる。

 そして、トイレといえば、花子さん以外にも有名な怪談がある。「赤いマントが欲しいか青いマントが欲しいか」と尋ね、赤を選ぶと刺殺、青を選ぶと絞殺する「赤マント」という怪談だ。菊原小学校にやってきた赤マントは、その役作りにまでこだわっていて、赤いマントとフードをかぶり、顔も覆って鎧や赤い手袋など、全身赤に身を包んでいる。でも、実は「このマントとかカッコよくないですか?」「殺人用の道具だって他にもたくさん…」と言って、おもちゃのナイフやロープを出してきたりする厨二野郎だった。ただ、その雰囲気だけは花子さんに「とんでもねー本格派が現れたと思ったよ」と言わせるほど、完璧だったようだ。

 怪談は、子どもたちの噂によって広まるもの。しかし、最近の小学生は学校が終わるとすぐに塾や習い事に行ってしまうので、怪談が活躍する放課後に学校に残っている児童なんていない。だからこそ、これからは今の子どもたちの生活スタイルや習慣にあった、新しい“怪談”が生まれていくのかもしれない。

文=小里樹