映画『呪怨』最新作公開! 「苦手な人は見ないほうがいい」ノベライズを手がける大石圭が『呪怨』を語る

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

Jホラーの代名詞とも言える映画「呪怨」シリーズ。シリーズ第1作の『呪怨 劇場版』の公開から11年。キャストはもちろん、監督も製作陣も変わり続けているが、同シリーズのノベライズは一貫してホラー作家の大石圭さんが手がけている。

それまでノベライズを手がけたことがなかった大石さんは、執筆にあたり参考のためにいくつかの映画ノベライズを読み、それらの映画とあまり変わらない印象に、自分は映画とは違うものを書こう、と決めたという。

advertisement

「(映画と小説が)違うものにすることを、製作陣や清水崇監督も許してくれた。だから自分で伽椰子や他の人物像も設定できたし、伽椰子の一人称でどうしても始めたかった。伽椰子で始まり、終わる。伽椰子は確かに化け物だけど、それでも、どこにでもいる普通の女の子で、一歩間違えれば誰でも彼女のようになるかもしれない。ただ、何かが彼女の中で狂ってしまっただけで、最初から化け物として生まれたわけじゃない、そんな哀しみみたいなものも、小説では書きたかった。書いてるうちに僕も伽椰子のことは結構好きになった。もちろん嫌なやつでもあるんですが(笑)」

しかし、その作品も最初はそんなにヒットするとは思わなかったという。

「初版で4万部刷ったんですが、編集者からそれを聞いた時びっくりして、売れ残ったらどうするんだ、と(笑)。でも発売前に、5000部増刷ですって電話が来て、数時間後に、やっぱり3万部刷ります、って(笑)。発売前重版で、結局7万部刷って発売になりました。普通発売前重版ってあんまりないので、書店からの注文を沢山頂いた、ということですね。発売された後も、5万、また5万と増えていった」

そんな予想外のヒットとなったノベライズ版「呪怨」シリーズ。2014年6月20日には最新刊『呪怨―終わりの始まり―』が刊行される。大石さんはノベライズにあたって、初めて「呪怨」シリーズの撮影現場を訪問したという。作品に描きたいと思っている、家の雰囲気や空気の気配など、実際に行ってみてイメージが掴めるものも多かったということだ。ノベライズ版では映画とは違った人物像や舞台設定、さらに深く踏み込んだ登場人物の心情などが描かれるという。

「僕は、自分の気分を高める上でも、きれいな女の子ばっかり小説に書いてきたので(笑)、佐々木希さんやトリンドル玲奈さんの出演は嬉しい。佐々木さんは特に僕が一番好きな女優さんなんですよ。彼女が演じる主人公の結衣は、映画でも小説でも割と芯の強い、気の強い女性で、でも一般的な、まともな女性という設定です。小説では「呪われた家」に入ってしまった、という不条理に対する、主人公の怯えはもちろんですが、怒りや、落とし前をつけないといけないという意志を強く描きました。小学校教師という職業を選んだ、その理由なども明確にしています」

しかし何よりも難しいのは恐怖描写だという。

「これが一番、本当に難しいんですよね。呪怨にあるのは“不条理な恐怖”です。あの家に足を踏み入れただけで呪われてしまう。それは本当に難しい。音や空気のよどみ、匂いとか、人の足音や畳の擦れる音など、そういったものを丁寧に描いているつもりです。その後の恐怖に向かって盛り上げていくことが大事。同じことは何度も描くと怖くなくなってしまうので気をつけています。それと、嘘の話だからこそリアリティを重視する、ということですかね。読者が今そこにいる、という風にするにはどう書いたらいいのか。僕は有り得ない話を多く描いてきたので、そんななかで考えついた結果が、質感とか匂いとか湿度とかを、短い言葉で描写する、ということでした。それが読者を怖がらせるひとつの方法だと思います」

怖ければ怖いほど嬉しいというホラーファンなら、大石さんが研ぎ澄ませていく恐怖描写で映画の恐怖をより掘り下げていくというノベライズは大歓迎だと思う。しかし、ホラーが苦手という人や、観たり読んだりする前から「怖くてムリ」という食わず嫌いの人も少なからず存在する。

「怖がりの人こそ、ホラーが好きなんだと思うんです。怖がれるからこそ面白いというか。だからこの映画は1人で観てもらうのが一番良いかと思います。怖くないとホラーの意味がないしね。怖くて見られないって人は観ないほうが良い。ホントに怖いから(笑)。僕は怖がりじゃないからホラー映画見るのにも、ホラー小説を読むのにも向いてない。スティーヴン・キングはすごい怖がりだそうですよ。足はどんなに暑くても毛布から出さないって。だれかが触ると怖いから(笑)。でも僕の場合は、妻がすごい怖がりなんで、妻の話を聞いて「ああ、なるほど」と思う時がありますね」

今回の映画版とノベライズ版はラストシーンが少し異なるという。そうなると、映画と小説どちらから楽しめばいいのだろうか。

「作家としては小説を先に読んでいただきたいですが(笑)、どちらでも大丈夫だと思います。うーん、まず映画で観て、その後小説を読んで、そしてまた映画を見る、というのが一番かもしれないですね。最初はびっくりして、小説を読んで理由が分かり、その後見ることでより味わいが深まると思います。今までの呪怨とはまた異なる呪怨になっているので、過去に読んで頂いた人も、まだ読んだことない人も、どちらも楽しんでもらえると思います」

映画『呪怨―終わりの始まり―』は2014年6月28日に全国公開、大石さんによる同名のノベライズは映画に先駆けて6月20日に刊行される。

⇒映画『呪怨―終わりの始まり―』公式サイト