【危険なのは親の気持ちの先走り】W杯を見て、子どもにサッカーやらせちゃう親御さんに読んでほしい一冊

出産・子育て

公開日:2014/6/20

 W杯で盛り上がる日々。テレビでは日本代表選手の少年時代のお宝プレー映像が流れ、家族の談話が紹介される。日本のスポーツ報道ではおなじみの特集だ。

 それとセットのように、世界的なスポーツ大会の後には「スノボスクールに問い合わせ殺到」「娘にフィギュアスケートを」など、子どもにスポーツを始めさせる親が続出する。

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 今回のW杯後にも、同様の現象は起こるだろう。否定するつもりはない。きっかけがどうであれ、スポーツをすることは、とても良いことだと思うから。

 だが、危険なのは「親の気持ちの先走り」だ。スクールやクラブチームに子どもを放り込めば、勝手に天才プレイヤーが生成されるわけではない。そこには、成功も挫折も、面倒な人間関係もお金も絡んでくる。過剰な期待で飛びつく前に、親御さんたちはよく考えて欲しい。なぜ子どもにサッカーをさせるのか? そして、親は子どものスポーツとどう関わるべきなのか?

 『少年サッカーは9割親で決まる』(島沢優子:著、池上正:監修/カンゼン)を読んでみた。JEF市原や京都サンガでジュニア世代の育成に携わってきたプロコーチ・池上正氏が、悩める親たちの質問に答える形式で、様々なアドバイスを送ってくれる。

 だがなぜ─『少年サッカーは9割親で決まる』のだろうか?

 本書にある数々の質問の中から、3つを取り上げ、その答えと共に「少年スポーツにおける親の在り方を探ってみよう。

■ケース1「ウチの子、やる気がビミョー」
【質問】サッカーに興味がある息子だが、運動能力に自信が持てず、少年団への参加を“やってみたいけどどっちでもイイ”とあいまいな態度。経験させるのは押し付け?

 池上氏はこう答える。「本人が本当に望むなら、その子に合った、できるだけいい環境を探すのが親の務め」。

「楽しくサッカーができて、全員が試合を経験できそうな、指導者が全員のことを考えてくれるクラブ」

 これを基準に検討しよう。そして、一度入れてみて、本人がやめたい場合は、無理に続けさせてはいけない。逆に、上達しないからとやめさせるのもダメ。やめた場合は「サッカーじゃないものを探そう」と一緒に考えてあげればいいし、続けるなら応援する。

 「執着するかどうかを決めるのは子ども」だし、「小学生の間は楽しくできるサッカーを目指してほしい」と考えるのがちょうどいい。親は「何のために子どもにサッカーをさせるのか?」を自問自答しよう。「サッカーを勉強に置き換えればわかりますね」と池上氏は語る。

■ケース2「一歩引いて見てられない」
【質問】息子のプレーを見るたびにストレス! 文句言いたくなるのをこらえ、一歩引いて見るにはどうしたら…?

 これは少年スポーツの現場でしょっちゅう見かける嫌な光景で、コーチよりも親のほうが子を叱ったり、指示したり、時には相手チームに暴言吐いたり…。なまじ親が経験者だと子どもにはイラツキがち。

 理解できなくもないが、池上氏は、質問者が「視点が子ではなく自分に向いている」と指摘した上で、「“子育て”の意味を考えよう」「子育ては子の成長に手を差し伸べること」だと助言する。怒鳴ってスッキリするのは自分の感情であり、怒鳴られた子が伸びはしない、と。

 ポイントは「子どもの成長のためになること」を自分の軸足にすること。大人に怒鳴られてその通りにする子は、その大人たちの「想定内」のプレーしかできない。自分でつかみ取っていく子が本当の成長を遂げるものなのだ。そして、親が負けることにタフになろう。子の勝敗や出来に、親が感情的にならないように!

■ケース3「成長スピードがいまひとつ」
【質問】他の子よりも上達が遅い我が子。本人は楽しくやっているようだが…。うまいアドバイスの方法は?

 自分の子によその親と比べられたらあなたも面白くないですよね?…と池上氏は前置きし、「子の気持ちになって考える」ことを勧める。そして「アドバイスではなく問いかけ」によって、子どもと向き合う方法を提示。

 例えば、「どうなりたいの?」と問いかけ、子が「パスが上手くなりたい」と答えたら「お父さんはこう思うよ」と、練習方法や考え方を伝える。子の内側から出てこその課題なのだと。そして、ホメ方のコツ。

 他人と比べる相対評価ではなく、その子がサッカーを始めた頃をもとにして、「ずいぶん上手くなったね」と絶対評価してあげよう。そのほうがこどもは伸びる!

 そう、これは少年サッカーの話だが、「子育て」そのものの話に他ならない。ならば、「親が9割」なのは明白だ。

 筆者はサッカー選手ではないが、サッカーを通して世界に友人ができたし、見るのも自分でプレーするのも大好きだ。W杯 を見て、興味を持った子がそこにいるのならば、池上氏が本書で繰り返し言っているように、「サッカーは楽しいものだ」と、教えてあげて欲しい。

 未来のスーパープレイヤーの第一歩は、サッカーを好きになることから始まる。

文=水陶マコト