レトルトカレー発明はノーベル賞モノ!? 知られざるカレーの歴史

食・料理

更新日:2014/6/22

 本とコミックの情報誌『ダ・ヴィンチ』7月号が、異色のカレー特集を打ち出している。その名も、「禁断の最終決戦!本VS.カレー」特集。お財布に500円しかなかったら、本とカレーのどちらを買う? という読者アンケートから、吉木りさ・斎藤工による「カレーと本」グラビア、小説やマンガのカレーを再現する企画、作家の薦める銘店&本とカレーにまつわるエピソードを公開するなど、さまざまな角度からコラボレーションを実現させている。とはいえ、本好き読者にとっては「なぜカレー?」と疑問符も浮かぶ企画だろう。そこで同誌ではカレーに親しんでもらうため、そもそもカレーとはなにか、文化にどのような貢献をしてきたのかを、スパイスの伝道師・渡辺玲に直撃インタビュー。知っているようで知らないカレーの姿を紐解いている。

●そもそもカレーとは?
 インドカレーは、個別にスパイスを組み合わせてつくる「スパイスおかず」みたいなもの。「カレー」という言葉がどこからきてどう定着したかは、いまだ解明されていないテーマのひとつです。もっとも有力なのはタミル語起源説。インドのタミル地方に、「カリ」という野菜のスパイス炒めのような汁気のない料理があるのですが、当時インドを支配していたイギリス人が勘違いして「カレー」という言葉を持ち帰ってしまったといわれています。ほかにも「カディ(ヨーグルトを煮てひよこ豆のかき揚げを入れたもの)」だとか、「カリア(チキンカレーの一種)」だとか諸説ありますが、「カレー」に似た言葉がまちがって定着したというところは大同小異共通していますね。

●インドから日本へ カレーの歴史
 イギリス人が駐在を終えて帰国する際、自分でブレンドするのは面倒だからと召使につくらせたミックススパイスをアレンジしたのが「カレー粉」です。最初に発明したのは英国C&B社。それが江戸時代末期、文明開化とともに日本に輸入されました。当初は高級料理だったカレーが日本中に普及したのは「ルウ」が発明されてから。1945年、株式会社オリエンタルが売り出した、「即席カレー」という、カレー粉を牛脂やバターで炒めた小麦粉などとまぜてかためたものがルウの前身です。炒めた玉ねぎのようなエキス、うまみやだしに油などを全部足して手間をはぶいた日本のルウは、ノーベル賞に食品部門があれば受賞間違いなしの、合理的で画期的な発明です。

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●カレーの種類とは
 日本のカレー文化はかなり多彩。「本格インドカレー」を、豚肉をはじめインドでは使用しない食材を使ってアレンジした「インド風カレー」。タイカレーなどに代表される「エスニックカレー」。フォン・ド・ヴォーなどで出汁をとった「欧風カレー」に、蕎麦屋のカレーやカレーうどんなどの「和風カレー」。「喫茶店カレー」は、小麦粉やバターでとろみをつけているところは欧風カレーに近いですが、スパイスが足してあったりしてやや軽く、食後のコーヒーによくあいます。個性的なのは「沖縄カレー」。昔ながらの、メリケン粉でとろみをつけた、真っ黄色で辛さゼロのどろどろカレーは、いまや沖縄でしか食べられません。レトルトはもちろん、スープカレーやドライカレー、焼きカレーなんてものもあって、日本のカレーは本当に「広い」ですね。

 同誌ではほかにも、カレーが日本人の国民食たるゆえんや、薬膳としてのカレーの効用、なぜ本の街にはカレー店が多いのか、などさまざまな秘密を解き明かしている。

取材・文=立花もも/ダ・ヴィンチ7月号「禁断の最終決戦!本VS.カレー特集」