100万本突破の大ヒットゲーム『妖怪ウォッチ』がオトナをも魅了する理由

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更新日:2014/6/26

 今年1月にアニメ放映がスタートし、瞬く間に関連グッズが完売するなど、今年に入って人気が爆発した『妖怪ウォッチ』。小学生を中心に大ブームを巻き起こし、6月26日には東京駅一番街に続き、ダイバーシティ東京プラザでも専門ショップがオープンする。

 ブームの中心を担うのは男子小学生だが、実は「親子そろってファンです」という家庭も少なくない。オトナまでを魅了する『妖怪ウォッチ』とは一体!? まずは作品についてご紹介しよう!

 そもそも『妖怪ウォッチ』とは、『イナズマイレブン』や『ダンボール戦機』などの生みの親・レベルファイブが制作したニンテンドー3DS用ゲームソフト。2013年7月に発売して以降、1年足らずで累積販売数100万本を突破した。

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『妖怪ウォッチ』©2013 LEVEL-5 Inc.

「世間ではモンスター系のゲームが多く作られていたので、次は何がくるだろう? と考えた時に“次は妖怪だ!”とのインスピレーションが湧きました」と同社代表の日野晃博さんが話す通り、同作品のテーマはズバリ“妖怪のいる日常”。舞台となるのはどこにでもある普通の町だ。ストーリーは、ある夏の日に小学5年生のケータが、神社の裏で“妖怪執事”を名乗る妖怪・ウィスパーに出会い、普段は見えない妖怪と友達になれる腕時計「妖怪ウォッチ」をもらったことから始まる。

 町に暮らす無数の妖怪たちとバトルをして、勝利することで妖怪は仲間(友だち)になる。次のバトルでは「妖怪ウォッチ」に「妖怪メダル」をセットして呼び出せば、出てきて仲間として戦ってくれる――と、ゲーム設定自体は一般的なもの。では、この爆発的ヒットの要因とは!?

「ひとつはクロスメディアを取り入れたことです。ゲームから生まれたアニメ、コミック、おもちゃなどの総合的な連動によって、人気の相乗効果が生まれたのでは」(日野さん)。その起爆剤のひとつとなったのが、ゲームの垣根を越えてイキイキと動き回るカワイイ妖怪たちだ。なかでも、今もっとも人気者となりつつある2体を紹介しよう。

●ジバニャン


©2013 LEVEL-5 Inc.

 車にひかれて死んだネコの地縛霊(!)。 必殺技はパンチを素早く繰り出す「ひゃくれつ肉球」。めんどくさがり屋で気まぐれだが、実は頼りになることも。口癖は、「オレッち、○○ニャン!」

●コマさん


©2013 LEVEL-5 Inc.

 田舎にある神社のこま犬に憑いていたが、神社が取り壊されて都会にやってきた妖怪。都会の生活に馴染もうと頑張っている。驚いたり、興奮すると「もんげー!!」と口にする。ソフトクリームが好き。

 地縛霊のネコに、こま犬に憑いている妖怪。文字にするとややコワイが、ひゃくれつ肉球は食らってみたいし、都会になじもうとしているあたりは抱きしめたいくらいカワイイ! 「出てくる妖怪は、それぞれ個性があり、人間のような特徴を持っています。普段の生活でも、こういう人いるよね! と思ってもらえることが面白さのひとつだと思います」(日野さん)

 また、私たちがなにげない日常に妖怪が棲む世界観に惹きつけられるのは、実は樹や石などあらゆるものに霊性を感じる古代日本人のDNAも関係しているかもしれない。文化人類学者のアン・アリスンは、日本のカルチャーを研究した著書『菊とポケモン グローバル化する日本の文化力』(実川元子:訳/新潮社)でこう述べている。

「“日本的”なスタイルは、現実世界と異世界が複雑に絡み合い、相互に行き来することが可能で、理性的な、もしくは認識できる方法ではとらえられないさまざまな存在によって世界は動かされているとする美学が働いている」

 アニミズム(多神教)から生まれた日本独自のこの世界観は、人間が世界の中心的存在であり、生と死が明確に区別される西欧ではありえない。これこそ『千と千尋の神隠し』や『となりのトトロ』、『ドラえもん』などにみられる、海外でもヒットする日本作品の共通点である、とも。

 その点、『妖怪ウォッチ』も十二分に世界をもトリコにするポテンシャルを秘めているといっていい。ポストポケモンとして、日本生まれのカワイイ妖怪たちが海の向こうへと乗り込んでいく日もそう遠くない!? 『妖怪ウォッチ』の快進撃から今後も目が離せない…ニャン!

文=矢口あやは