新作『銀翼のイカロス』にも黒崎駿一が登場! そのきっかけは片岡愛之助の怪演だった

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

主役の半沢直樹を筆頭に、登場人物の強烈な個性がぶつかり合うドラマ『半沢直樹』。中でも鮮烈な印象を残したのが、オネエ口調で半沢を追い詰める国税局査察部統括官・黒崎駿一だ。歌舞伎界のプリンス・片岡愛之助さんの怪演に、心を鷲づかみにされた視聴者も多いだろう。『ダ・ヴィンチ』8月号ではそんな片岡さんに、ドラマ裏話を直撃している。

「オファーをいただいた時は正直戸惑いました。でも、もう40歳を過ぎましたし、こういう役も勉強だと思い、引き受けたんです。オネエ役はもちろん初挑戦。“若い頃は女形をやっていたから慣れているでしょう?”と言われますが、女形はあくまで“女性”を演じるのでオネエとは違います。普段から物腰が柔らかい弟子の女形・片岡愛一郎を観察し、誇張して演じました。表情の作り方ひとつとっても、一からの勉強でした」

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原作にも目を通し、ストーリーにすっかり引き込まれたと言う。

「非常にリアルな小説ですよね。銀行融資の内情、行内の出世争いなど、自分には縁遠い世界の話ですが、本当にありそうで怖さを感じました。原作がしっかりしていたからこそ、ドラマの脚本も面白く膨らませることができたのだと思います」

原作の黒崎は金融庁検査官として東京編にのみ登場するが、ドラマの彼は大阪編からその特異な存在感を発揮する。

「大阪編から東京編に移り、半沢と再会するシーンは特に気に入っています。ようやく黒崎から逃れられたのかなと思ったところで、“お久しぶりね”と再登場。演じていて楽しかったです」

蛇のようにしつこく、狙った獲物は逃さない。しかし、そんな黒崎のことを愛之助さん自身は“悪者”だとは思っていないそうだ。

「半沢との対立構図から悪者だと思われていますが、本来は真面目な男だと思うんです。職務に忠実で、不正を見逃さない。立場を変えれば、正義の味方とも取れませんか?」

そんな愛之助さん演じる黒崎は、原作者の池井戸潤さんをも魅了。新作『銀翼のイカロス』に黒崎を登場させたのも、愛之助さんの演技に魅せられたからだと言う。

「それは光栄です! 役者として非常にうれしいお言葉です。僕にとっても、黒崎役は人生のターニングポイント。代表作になりました。黒崎役をきっかけに僕を知り、歌舞伎に足を運んでくださった方も多いんです。『半沢直樹』への出演が歌舞伎を広めることにもつながり、本当にうれしいですね」

視聴率40%を超え、異例のヒットとなった『半沢直樹』。放送開始から約1年が過ぎた今、愛之助さんは同ドラマが人気を得た理由をこう振り返る。

「力強い原作、ベテラン俳優の熱演、監督やスタッフの熱意。みんなが同じ方向を向き、心がひとつになったからこそ、ヒットにつながったのでしょう。もうひとつ理由を挙げるとしたらタイミング。原作は数年前に書かれましたが、今の時代にぴったり合っていた。時代の空気を捉えたからこそ、ここまで大きな支持を得たのだと思います」

同誌では『花咲舞が黙ってない』で主演を演じた杏や、原作者・池井戸潤本人によるインタビューをはじめ、ドラマと原作を比較検証するニコ・ニコルソンによるマンガを掲載するなど、充実の池井戸潤特集となっている。

取材・文=野本由起/ダ・ヴィンチ8月号 「池井戸潤」特集