そろそろ「女子」って言うの、やめませんか?

暮らし

公開日:2014/7/15

 女子会に女子旅、女子プランなどなど、世は「女子」流行りだ。女子という言葉はもともとあったものだが、「女子会」という名称が登場してからというもの、様々な場面、どんな年齢の女性でも「女子」を自称することが多くなったように思う。ちなみに「女子会」という言葉が流行したのは、居酒屋『笑笑』が「わらわら女子会」という女性専用のプランメニューを発案したことによると言われており、2010年の新語・流行語大賞でトップテン入りをしている。

 そんな風潮に「いつまで“女子”って言ってるつもり?」と苦言を呈すのが『若さを卒業すれば女はもっと美しくなる』(花千代/阪急コミュニケーションズ)だ。花千代さんは冒頭で、30代後半くらいに差し掛かった「若くはない。しかし中年とかおばさんという言葉で自分をくくりたくない」という女性が「女子」という言葉の多様を生んだのでしょう、と語っている。そして「“女子”を自称している限り、“若くはない”実年齢から目をそむけられる」と、女子という言葉を使いたがる風潮の本質をズバリと突いている。

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 しかし「女子」という言葉を使ってはいけないわけではない、と花千代さんは言う。女子という言葉には「本来、少女のみを指す言葉に加えて、女性全般を表す」意味があるからだ。しかし「社会的な認識としては“女子”は若い女の子を指す言葉」であり、若くない女性が使うと批判的に捉えられる、という事実を説明している。なので、女子という言葉を使うときには「賢く、自覚的に使い分けましょう」と釘を刺し、魔法の言葉である「女子」という甘い世界に浸らず、そして「若さ」という殻の中に安住せずに、「成熟」という上質で洗練された本当の大人の魅力を持って欲しいと語っている。

 花千代さんはフランス留学時、マナーをわきまえて人にスマートに接し、周囲への配慮を忘れず、内面から滲み出る個性と積み重ねた経験による豊かさや聡明さを備え、周りから敬意を払われる大人の女性「マダム」たちの持つ誇りに触れたことで、成熟した女性になろうと思ったそうだ。その人生は波瀾万丈だ。11歳の時に両親が離婚、しかも父親の浮気相手は母の妹で、ショックを受けた実母から育児放棄されて中学生からはひとり暮らし。高校を卒業して1年近く会社勤めをした後、興味のあった花柳界へ飛び込んで芸者となる。しかし32歳で芸者を辞め、単身フランスへ留学。4年後に帰国し、パリで習得したフラワーアレンジメントの仕事を始め、2008年には北海道・洞爺湖でのG8サミットのオフィシャル晩餐会での会場装花を手がけるなど活躍、そして45歳で18歳年上のアメリカ人男性と結婚、いきなり6人の連れ子の母となった。そんな花千代さんの言葉は、数々の経験に裏打ちされた確固たる自信に満ちており、現状を打破するため、あえて自分に負荷をかけ、その中で磨かれることで女子を卒業し、大人になる。そして母性(子どもの有無とは関係ない)が花開くことで「成熟」するのだと言う。

 本書では花千代さんの私生活でのエピソードなども折にふれて紹介されているのだが、そこを読んで「ケッ、自慢かよ!」なんて思ってしまう人は、まだまだ成熟に程遠いと言えるかもしれない。読むことで、まだ「女子」なのか、それとも「成熟」しているのかを判断するリトマス試験紙になるのではないだろうか? 「女子」を自称する「もう女子ではない年代」の方々には、自分を知り、個性を活かし、それをどう表現したら自分らしく輝けるのかを考え、成熟した大人にしか備わらない「美」を目指して欲しいと切に思う。男性としては、若くはない女性に「今日、女子会なの~」と言われると、なんて返していいやらツライんですよ……。

文=成田全(ナリタタモツ)