自分のことには無頓着? 日々をホンネで生きる“おばさん”のおおらかなる人生
公開日:2014/7/18
お姉さんを諦めた時から人はおばさんになる。お姉さんでいようとすればおのずと辛くなる。毎日、綺麗にしなければいけなし、どんな行動をする時だって他人の目を気にする。しかし、おばさんだと開き直ったとしよう。周りを気にせず、本音で喋れる。そこには素晴らしい人生が待っているのではないだろうか。
『おばさん事典』(毎日新聞社/小川有里)では、素晴らしきおばさんの日々が掲載されている。おばさんはいつも周囲のことを考え生きている。決して図々しく、自己中心的に生きているわけではない。気遣いと思いやりを持った素敵な女性だとわかる。本書を読めばホンネで生きるおばさんの良さがわかるだろう。
■役にたつなら他人のためにも頑張ります。
おせっかい。少しのおせっかいなら誰だってやってしまう。あとで余計なことしなければ良かったと思うことも多い。しかし、おばさんのおせっかいは次元が違う。
エミさんはスポーツジムで汗を流し帰るところだった。そこで、受付に立つ若い主婦を見かける。彼女は入会希望らしく「会員の知り合いがいれば入会金が無料になります」と説明を受けていた。会員であるエミさんは出口で待ち構える。
「あの紹介者はいるのですか」
「いいえ、いません」
「私がなりましょうか」
と、見ず知らずの若い主婦に声を掛けた。
申し込みにはハンコがいる。
「この先のスーパーで待っていてください」と告げて、家に帰り、ハンコを持ち、自転車を飛ばしてスーパーまで向かったという。
若い主婦は驚いていたが喜んでいた様子。
娘からも「実はその人、お金持ちかもしれないのに」と呆れられたようだが、エミさんはおせっかいをしたと思いつつも満足しているようだ。
おばさんには恥ずかしいという概念はない。全く知らない人にでも役に立つなら世話を焼く。
■日々、ホンネ。欲しいものはレースの下着。
おばさんは思ったことを口にする。若いころは何がほしいと聞かれても遠慮してしまっていた。けれど、おばさんになれば遠慮もなければ、恥ずかしさもない。
著者である小川さんは親しい友人にお礼をしようと思った。レースのついた優雅なハンカチを贈ろうと思い好みの色調を聞いてみる。
そこで友人が発したのは「レース付きならパンツのほうがいいな」という言葉。友人はいつも3枚で1組の素っ気ない特売パンツをはいている。自分では1枚千円もするレースつきのパンツはなかなか買えないのだと言う。
「どうせなら華やかな色を」との希望通りのパンツを贈った。「つけると気分が弾む」と友人も喜んでくれたそう。
そこから小川さんは同年代、年下の友人には「レース付きハンカチとパンツ、どちらがいい?」と聞いている。答えは全員「パンツ」だそう。しかし、年上の70代の女性にこの話をすると私達の世代ではありえないと目を丸くされたそう。
70代の方だけではなく、おばさん以外はみんな驚きそうな話だ。パンツがほしいと言うほうもすごいが、その後、他の人にもハンカチとパンツどちらがいいと聞くのもおばさん力。遠慮して使わないハンカチを贈るよりも必ず使うパンツを贈られるのだから、これこそがおばさんの気遣いであり思いやりなのかもしれない。
おばさんは図々しく自分のことばかりを考えているわけではない。いつも他人のことを考えている。おもてなし文化がもてはやされているが、おばさん文化も世界に通じる素晴らしい文化なのかもしれない。
文=舟崎泉美