美と知が究極の融合! 「世界の図書館」を旅してみよう【第1回 厳格&クラシカル編】

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

図書館というと、背表紙に分類シールが貼ってある本が棚に整然と並び、街中の面白くもなんともない普通の建物にある、というのが一般的な日本人が持つ「図書館のイメージ」だろう。しかし海外にある図書館には、ゴシック様式やバロック様式のような歴史ある建物だったり、飴色になった年代を感じる木製の書架があったり、非常に先鋭的なデザインを取り入れるなど、「美」と「知」が究極の融合をしている図書館がたくさんある。

そんな魅力的な図書館を世界中から選りすぐり、美しい写真で紹介しているのが『世界の夢の図書館』(エクスナレッジ)だ。本書を開くと、数百年という歴史を持つ重厚な建物から、未来を先取りしたような空間を持つものまで全37の図書館が紹介されており、「本を探す・読む・借りる」という機能だけではない、そこにいるだけで積み重なった時間と知識まで吸収できるかのような気分になれる。

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その中から今回は「厳格&クラシカル編」として、世界的に有名な大学の図書館3つを紹介しよう。

「オックスフォード大学ボドリアン図書館 オールド・ボドリアン&ラドクリフ・カメラ」(イギリス)

イギリスの名門オックスフォード大学にある研究図書館。最古の建物は15世紀に作られたゴシック建築の神学校で、図書館全体はその他いくつかの棟で構成されている。オックスフォード大学図書館が作られたのは1320年頃。その後ヘンリー5世の弟のグロスター公ハンフリーが写本を寄贈し、それを収蔵するために1448年に神学校(この建物は映画『ハリーポッター』で使用されている)の上に作られたのがハンフリー公図書館だ。

「ボドリアン」とは、エリザベス女王1世の外交官であったトーマス・ボドレーに由来するもので、ハンフリー公図書館の拡張工事を進め、1602年に完成した(その後も幾度か増築している)。写真は、図書館の中でも一番古い「オールド・ボドリアン」と呼ばれるハンフリー公図書館。で、木製の天井と梁には絵が描かれており、荘厳な雰囲気がある。この図書館は『幸福な王子』のオスカー・ワイルドや、『指輪物語』のJ・R・R・トールキン、『ナルニア国物語』のC・S・ルイスなども利用していたという。

またラドクリフ・カメラの「カメラ」とは丸天井の部屋を意味するラテン語で、元科学図書館であった円形の建物の名前だ。これは医師のジョン・ラドクリフの意思と遺産で設立されたものだ。

 

「ダブリン大学トリニティ・カレッジ図書館 オールド・ライブラリー」(アイルランド)

アイルランドで一番古く、1592年にエリザベス女王1世によって設立されたダブリン大学トリニティ・カレッジ。その大学に1712~1732年にかけて建てられたのがトリニティ・カレッジ図書館オールド・ライブラリーだ。この図書館は「世界でもっとも美しい本」と言われる、800年頃にラテン語で記された福音書の装飾写本「ケルズの書」を収蔵していることでも有名だ。

写真は1732年に作られた、約65メートルという長い部屋の両側に本が並ぶ「ロング・ルーム」と呼ばれる部屋。一部屋としては世界で最も大きい図書室で、1743年から哲学者や作家、そして大学関係者などをかたどった大理石製の胸像が置かれるようになったという。

このロング・ルーム、映画『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』に登場するジェダイの情報保管所のモデルではないか、と言われているそうだ。ちなみに上階部分とかまぼこ型の天井は書架を広げるため、1860年に増築されている。書架にはオーク材が使われるなど、謹厳でクラシカルな雰囲気満点で、年間50万人が訪れるアイルランドの人気観光スポットでもある。

 

「ジョンズ・ホプキンス大学ジョージ・ピーボディ図書館」(アメリカ)

メリーランド州ボルティモアの実業家であったジョンズ・ホプキンスの遺産で設立されたジョンズ・ホプキンス大学は、ノーベル賞受賞者を数多く輩出し、あの新渡戸稲造も留学した世界トップクラスの大学だ。その大学の図書館であるジョージ・ピーボディ図書館は、ボルティモアの企業家ジョージ・ピーボディの遺産をもとに作られた研究所が前身であり、1878年に研究所の図書館として完成、1982年にジョンズ・ホプキンス大学の一部となっている。

この図書館は「本の大聖堂」と呼ばれており、写真はその閲覧室。床は大理石、6階まで吹き抜けで、蔵書の並び方に厳格さを感じるほど整然としている。しかしこの閲覧室、夜になるとイベントスペースとして貸し出されている。学会などだけではなく結婚式やパーティーの会場としても使われており、厳格な雰囲気から一転、華やかな場となっているのだ。

借りられるのは閉館後と閉館日である土~月曜、着席で200名、立食なら400名までOKで、もちろん食事もできる。映画『セックス・アンド・ザ・シティ』ではニューヨーク市立図書館が結婚式会場として使われた(実際には直前キャンセルだった)が、こうした歴史ある素敵な空間での試み、日本でも定着したらいいと思うのだが。

文=成田全(ナリタタモツ)