日本人が世界で勝つには“ビッグマウス”よりも“ネガティブシンキング”のほうがいい?

暮らし

更新日:2014/7/26

 サッカー日本代表のW杯ブラジル大会は、1勝もできないまま大惨敗で終わった。今となっては、大会前に本田や長友が「俺たちはワールドカップで優勝できる!」と豪語していた言葉も虚しいばかり。しかし、アスリートがあえて高い目標を口にすることで自分を鼓舞し、集中力を高めるのはよく知られた手法でもある。実際、そういったポジティブシンキングのおかげで成し遂げられてきたこともあっただろう。しかし、今大会の結果には、「自分たちの実力を勘違いした発言で、ファンを裏切った」という批判も出ているらしい。これまでよしとされてきたポジティブ思考だが、今回のことでそれ自体にも疑念が生じてきたのだ。そこでこの機会に、巷にはびこるポジティブシンキングの功罪を改めて考えてみよう。

 今やビジネスの世界でもポジティブシンキングは成功への必須条件とされており、関連書籍が一大ジャンルを形成する人気ぶりとなっている。ベストセラーの『七つの習慣』(スティーブン・R. コヴィー/キングベアー出版)、『「願う力」で人生は変えられる―心からの願いと「内なる力」を知るスピリチュアル・ルール』(アラン コーエン/ダイヤモンド社)、『ザ・シークレット(引き寄せの法則)』(ロンダ・バーン/角川書店 )、『生き方―人間として一番大切なこと』(稲盛和夫/サンマーク出版)など、巷に蔓延する自己啓発本や有名経営者の自伝には、必ずと言っていいほどこの手の思考法が紹介されている。

advertisement

「前向きな言葉を口に出したり書いたりすれば、物事は上手くいくようになる」
「努力は必ず報われる」
「ネガティブな出来事もポジティブに転換して考えればいい」

 確かにこうした「念ずれば叶う」的なポジティブシンキングは、有効に働くこともあるのだが、あまり「ポジティブの罠」にとらわれすぎると、時に逆効果になってしまう危険性もはらんでいるのだ。

 ライフハッカー日本版の「ポジティブでいようとするほど自信を失うメカニズム~ネガティブシンキング」によれば、「ポジティブでいることじたいがゴールになってしまい、過程で満足感を得る」ようになってしまったり、無理にポジティブでいようとすることで「感情と思考の不一致の状態が続くと本来の力が発揮されないどころか、ストレスも生まれてしまう」のだという。

 また中野智之氏の「ネガティブシンキングの効用」では、「いつもポジティブでいないといけないとの思い込みは、かえって状態の把握を拒み、事態の悪化を招く可能性がある」といった指摘がされている。初戦を落とし、ギリシャ戦も引き分けるという最悪の結果が出てしまった中でなお、「(W杯優勝が)かなう可能性はゼロではない」と言い続けた日本代表チームも、まさにこれに近い状態だったのかもしれない。

 では、ポジティブ思考が行き詰ってしまった場合にはどうすればいいのか。

 実は、日本人の気質には、むしろ「ポジティブ」より、「ネガティブシンキング」が役に立つという指摘がある。

ネガティブシンキングには、あえて最悪の状況を想定することで事前に危機を察知したり、失敗した際の切り替えが容易になるという効用があるというのだ。

 森川陽太郎氏の著書『ネガティブシンキングだからうまくいく35の法則』(かんき出版)によれば、ネガティブな感情も含めた「ありのままの自分を受け入れる」ことで、知らず知らずのうちに自分にかけてしまった「メンタルブロック」から解放され、本番に強い精神状態を作ることができるのだという。

 そのための具体的方法として提示されているのが、森川氏が開発した「OKラインメンタルトレーニング」。高い目標を設定すると、クリアできなかった時、自分にガッカリして反省ばかりを繰り返す悪循環に陥ってしまいがちだが、これに対し「OKラインメソッド」は確実に達成できる低い目標を設定し、小さな成功を積み上げることで自信を得るという手法。その上で大切なのは「失敗を受け入れ」て「反省はしない」こと。この2点を習慣化することで、次の成功だけに集中できるようになるのだという。

 ちなみに森川氏は今年4月にプロゴルファー・横峯さくらと結婚したばかり。長らく低迷を続けてきた横峯が復活した影に、森川氏の支えとネガティブシンキングがあったことは言うまでもないだろう。

 今大会で、ポジティブな精神論だけでは埋められそうにない圧倒的な実力差を見せ付けられた本田にとっても、この思考法はまさにピッタリのはず。もともとネガティブに考えがちな自分を変えるためにポジティブ思考を始めたといわれる本田には、更なる成長のためにも、「スーパー・ネガティブシンキング」での再スタートをお勧めしたい。