やっぱり日本のゴジラが観たい! 日本版ゴジラを深く知るための3冊

映画

公開日:2014/8/19

 7月25日、ギャレス・エドワーズ監督による『GODZILLA』がついに日本でも公開された。3日間で動員45万人を突破、週末興行成績第1位を記録するなど、今度のハリウッド版ゴジラは日本でも大いに受け入れられたようである。

 新作ゴジラの盛り上がりとともに、関連書の刊行活動も活発だ。ゴジラに登場する全怪獣を収めた図鑑から本格的な作品評論まで、今年に入って多種多様のゴジラに関する書籍・ムックが発売されるようになり、「ゴジラ本」フェアを展開している書店も少なくない。そこで今回は数あるゴジラ関連本のなかから、3冊を厳選してご紹介する。

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■『ゴジラ大辞典 新装版』(野村宏平:編、東宝株式会社:協力/笠倉出版社)
 日本で製作されたゴジラ28作品を鑑賞する際の基本図書としてお薦めしたいのがこの本である。ゴジラ映画の怪獣・キャラクター・メカニック・地名その他、作品内に登場する事柄を全て解説し、50音順にまとめたゴジラ辞典の決定版である。2004年に第1版が刊行され、14年7月に第28作『ゴジラ FINAL WARS』の項目を加えた新装版が発売された。
 『キングコング対ゴジラ』に小道具として登場する「バヤリースオレンヂ」(現在、アサヒ飲料から発売されている「バヤリースオレンジ」のこと)まで掲載するなど、まさにゴジラにまつわることなら細大漏らさず載っている。辞典の部分以上に見逃せないのが、あらすじ・解説・時代背景の説明を簡潔かつ過不足なく盛り込んだ作品紹介だ。昭和シリーズのラストを飾った「メカゴジラの逆襲」について「登場怪獣がメカゴジラ2とチタノザウルスだけでも、十分に成立可能な物語」とコメントするなど、作品の魅力だけでなく欠点も冷静に書かれている点に好感が持てる。

■『初代ゴジラ研究読本』(洋泉社)
 テーマを1954年の第1作『ゴジラ』だけに絞り、スタッフやキャスト、特撮映像の関係者たちへのインタビューや資料検証を主体にした研究書である。ギャレス・エドワーズも大ファンだという1954年版『ゴジラ』だが、それが60年経ってもなぜここまで人々を魅了するのか、を考える上で必読の1冊だ。
 54年版の主役である宝田明のインタビュー(聞き手は芸能界きってのゴジラファンである佐野史郎!)や、物語のキーパーソンである芹沢博士を演じた平田昭彦が監督の本多猪四郎とともに出演した1981年のトークショー「よみがえれゴジラ」の模様などスター俳優たちの証言も読み応えがあるが、それよりも圧巻なのが「ゴジラ俳優名鑑」である。台詞がない端役も含め、54年版「ゴジラ」に出演した俳優80名のプロフィールと人となりを調べたリストだ。『ゴジラ』だけでなく、他の東宝特撮作品や黒澤映画などで名バイプレーヤーぶりを発揮した人物も多く、彼らの顔ぶれを眺めるだけでも『ゴジラ』や『七人の侍』などの大作に取り組み、かつてない熱気に包まれていた当時の東宝映画の様子が伝わってくる。

■『ゴジラ 漫画コレクション1954-58』(阿部和助、杉浦茂、藤田茂著/小学館)
 1954年から58年にかけて、少年誌などで描かれた「ゴジラ」漫画や絵物語を5編収めた本だ。このうち映画公開前に発表されたのが、ゴジラのキャラクター原案にも携わった阿部和助による「科学冒険絵物語 ゴジラ」である。基本的なストーリーの流れは映画と同じだが、ゴジラの被害で家族を亡くした新吉少年が主役級の扱いで活躍し、ヒロインである山根恵美子が新吉と同い年くらいの少女として描かれているなど、少年向けにアレンジした箇所もあるのが確認できて面白い。
 また、杉浦茂の「大あばれゴジラ」は“ギョットラス”や“オソロス”といった愛嬌のあるオリジナル怪獣が登場し、ゴジラが人間の言葉を喋るなど、コミカルなキャラクター漫画になっている。ゴジラが人々の恐怖の対象から脱し、児童たちのヒーローとして描かれるのは60年代後半から70年代にかけてのことだが、50年代でも漫画においては既にアイドル化されたゴジラが描かれていたのである。コレクターズアイテムの感はあるが、映画以外のジャンルでどうゴジラが表現されていたのか、気になる方はぜひご一読を。

 『メカゴジラの逆襲』から9年の沈黙を経て、1984年版『ゴジラ』で復活したという経歴のあるゴジラ映画だが、その背景には昭和30年代にゴジラを観ていた少年たちが大人になり、ゴジラの本を企画編集するようになったことがある。出版物の刊行が再評価の機運を高めたという歴史がゴジラにはあるのだ。すでにハリウッド版の続編が決定しているとのことだが、これだけ多くのゴジラ関連書が出ているのは、もしかしたら日本製ゴジラ復活の兆しなのかもしれない。

文=若林踏