ポケモンや妖怪ウォッチに負けじと「昆虫探検」に出かけてみた!

暮らし

公開日:2014/8/23

 世間は夏休み。子どもたちは元気に外を駆け回っているかというと、そうでもないようだ。ひと昔の夏休みといえば、虫網と虫かごを持って野山を駆け回り、昆虫を捕まえることに夢中になっていたものだが…。娯楽が進化した現代においては、子どもたちの「コレクター欲」はゲーム機の中のポケモンや妖怪で十分満たされてしまうのだ。

 そんな中で昆虫採集に勤しんでいるのはむしろ大人のほう。日常生活の中で小さな自然とのふれあいを楽しむアマチュアナチュラリストなる人たちが最新のデジカメやスマホに搭載された接写機能を駆使して、昆虫の写真を撮り、昆虫の名前が知り、生態を調べることにご執心なのだという。

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 『昆虫探検図鑑1600』(川邊透/全国農村教育協会)は、そんな人たちにうってつけの昆虫探検の入門書である。ここには1600種類もの昆虫の見た目と生息地域、見られる時期といった最低限の情報が科目ごとに掲載されており、それらのヒントを基に昆虫を探し、付録の「写真検索マトリックス」なる表で撮った写真と照合することができる。これを使えば、素人でも昆虫探検を楽しめるはず……。軽い気持ちで界隈を探索してみることに決めた。

 漠然と見つけた虫を撮影するのも味気ないと思い、特定の虫を探し当てることにした。赤・青・緑の美しい模様をもった「ハンミョウ」や黒褐色で縞模様が凛々しい「オオトラフハナムグリ」に目を奪われるが、これらは近隣では探せない「レアもの」である。

 目をつけたのは「ゴマダラカミキリ」。同書に掲載されている写真が江東区で撮影されていたこと。見た目が「かっこいい」ことがその理由だ。見つけた時のよろこびは「ポケモンゲットだぜ!」と叫びたくなるくらい大きいだろう。そんな期待を抱きつつ、近所の公園へと出かけてみた。

 ところが、猛暑の中である。日陰とはいえなかなかお目当ての「ゴマダラカミキリ」には出会えない。仕方なく見つけた昆虫を片っ端から撮影していくことに。すると普段は気にもかけないコガネムシやゴミムシ、羽ムシもどこかお宝のように感じてしまう。残念ながらお目当てのお宝には出会えずじまいであったが、図鑑に載っているだけで、かつてない充足感を得ることができるのは、ある種の発見であった。自らの足で満たす「コンプリート欲」は格別なのだ。

 同書には「蝶や蛾など美しい縞模様をもつ天然のアートな昆虫を撮影して楽しむ」「カッコイイ造形をした昆虫を拡大写真で撮り楽しむ」「飼いやすい昆虫をペットとして楽しむ」といった楽しみ方が記されているが、“実際にフィールドでの昆虫探検を楽しみつつ、ぜひ、自分なりの昆虫世界の楽しみ方を見つけていただきたい”というメッセージが何よりも印象的だった。素晴らしき昆虫の世界は体験して初めてわかる。この1冊を携えて、探検に出かければあなたもきっと昆虫の虜になるだろう。

文=関口宏(Office Ti+)