【うまくいかない仕事や人間関係から逃げる方法】大切なのは弱みを克服しようと考えないこと

仕事術

更新日:2016/1/13

「どんなに辛くても、逃げちゃいけない」
「最後まであきらめないで」
「努力は報われる」

 小さいとき、親や先生にこんな言葉を散々聞かされた。それは、呪文のようにアタマとカラダにしみついている。でも…、一人職場に居残り、24時を回った時計の針を見て、ため息をつく。簡単にやめたらただの根性なしかもしれない。ここであきらめたら、あきらめ癖がついて、今後何をやっても続かないかもしれない。続けてこそ見えてくる世界があるのかもしれない。でもでも…、本当にこれでいいの!?

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『人生の9割は逃げていい。』(井口晃/すばる舎)。このタイトル、まさに聞きたかった言葉。逃げてどうにかなるなら、今すぐこの場から逃げます! …と喜び勇んで本を手にしてみたものの、逃げればいいなんて、世の中そんなに甘くないはず。まず、著者の井口晃氏ってどんな人?

 経歴を見ると、井口氏はまさに逃げのスペシャリスト。中学・高校でいじめられて、転校を繰り返すこと5回。高校卒業後、ホテルマンになるべく専門学校に通うも、ホテルのバーのバイトでミスを犯して怒られ、学校もバイトも続ける意欲をなくしたそうだ。さらに、家族・友人との人間関係も悪化し、その環境から逃げるためにニューヨークに留学。しかし、留学先でも自分に自信がなく人間関係に対する恐怖のために、授業に行かない日が続いてあえなく帰国。そして、就職活動もせずに日本でしばらくニート生活を送ったという。

 そんな彼が、なけなしの3万円を手に実家を出て上京。英語を人に教えるセミナーをはじめて、生活はなんとかできるようになったという。とはいえ、「これは本当にやりたいことではない」と、次に始めたのが自己啓発のセミナー。自己啓発本を読み漁っていた井口氏は、自分も「人が成長するための助けになりたい」と思うようになったそうだ。その仕事が成功し、今では好きなときに好きな仕事ができ、1年の半分は海外で生活をするという理想のライフスタイルを実現できたという。つまり、逃げ続けることで自分が本当にやるべき仕事を見つけることができたとか。こうした経験を振り返り、自分に合っていないことに時間を費やすことは間違いと語る。

 では、どうやって合っている、合っていないということを見極めればいいのか。多くの人が悩んでいるのは、そこではないだろうか。例えば、「苦手な仕事からは逃げていい」と言ってのける井口氏は、仕事を得意・不得意と、好き・嫌いに分けることをすすめている。

「不得意かつ嫌いな仕事」:どう頑張ってもできないので、人に任せるべき。
「得意で好きな仕事」:一番重要な仕事。何よりも優先的に行う。
「好きだけど不得意な仕事」:やったほうがいい。熱中できるから、結果が出やすい。
「得意だけど好きではない仕事」:得意なら好きになる可能性があるので、やってみる価値あり。どうしても好きになれない場合は、人に任せる。

 忙しさに流されて、今更そんなことは考えず、ただ毎日の業務をこなすだけになっている人もいるのでは? 一度立ち止まって整理してみるといいかもしれない。また井口氏は、大切なのは弱みを克服しようと考えないことだという。確かに、“克服”は日本人の美徳とするところ。この考えに囚われていた人は、そんな自分を客観的に見直すのもいいかもしれない。

 仕事にも大きな影響を及ぼす、人生の大きな課題が人間関係。井口氏は、「あなたにとって重要でない人からは逃げていい」と断言する。すべての人と平等に付き合うのは難しい。だから、不謹慎と知りつつ彼は次のように人間関係に優先順位をつけている。

「超重要カテゴリー」:仕事でもプライベートでも一緒にいたい人。
「重要カテゴリー」:ビジネスを一緒にする人。
「普通カテゴリー」:友達。たまに会ったり、仕事を依頼したり、頼まれたりする人。
「知り合い」:フェイスブックを通して、「お話したい」「会いたい」という人。

 こうしたカテゴリーに分け、順序をつけて付き合っているという。「知り合い」レベルの人間関係は、お客さん以外は切ってもいいと思っているそうだ。なんともシビア。しかし、例えばメールの返信でいつも誰にでも丁寧に返事してすっかり疲れているという人は、参考にしてもよさそう。順序づければ、嫌な人間関係や仕事を引き寄せることがなくなると井口氏はいう。

「この状況から逃げたい!」と思っている人は、置かれている状況を整理し、重要ではないことからは躊躇なく逃げる、そんなやり方もアリかもしれない。かといって、この方法に固執する必要もない。うまくいかないという人は、さらにほかの方法がないか探すべく“逃げていい”だろう。

文=佐藤来未(Office Ti+)