夢と志は違う? アルビレックス新潟会長・池田弘が綴る「一流」になるための「志」の立て方

暮らし

更新日:2014/9/11

 気づけば、土気色した顔をぶら下げた社会人のひとりになっていた。夢を失った大人たちが詰め込まれた満員電車を見送りながら、「ああはなりたくない」と思っていたあの頃の自分はどこにいったのだろうか。こんなはずではなかった、もっと充実した生活を送っている自分を想像していた。そんな風に現状に不満を抱くビジネスパーソンは決して少なくはないだろう。就職活動の時にはそれなりに夢を描いたはずなのに働き始めるとどうしてそれは途端にしぼんでしまうのか。どうしたら世の中や会社になど振り回されず、自分の夢を実現することができるのだろうか。

 実業家でありアルビレックス新潟会長の池田弘氏は、著書『かなえる力』(東京書籍)の中で、自身の経験に触れながら、夢を叶える方法について述べている。池田氏が成功したその秘訣とは一体何だったのか。そこには現状を打開したいと考える社会人へのヒントが隠されている。

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 池田氏は、自らの人生と真剣に向き合うことで今の成功を得ることができたと振り返る。人生についてあれこれと悩むうちに、彼は「人の役に立つこと」「自分が生まれた土地に恩返しをすること」という2つの志を見出したのだ。この思いを実現できるものとして神社で宮司をしていた父親の後を継いだが、社会が大きく変わり始め、神官だけでは自らの目指すものは実現できそうにない。そう気づいた池田氏は、すぐに経営者と神官の二足の草鞋を履くことを決めたのだそうだ。その結果、現在では、彼の経営するNSGグループは、30を越す専門学校の他、大学、大学院などからなる一大学校グループに成長。「ナンバーワンとオンリーワンを追求した学校づくりを目指した」というように、ビジネススキルや情報処理、医療事務を学ぶ学校から漫画家やミュージシャンを養成する学校まで、あらゆる若者の夢を支援する場となっている。また、彼は、サッカーJ1の「アルビレックス新潟」の会長としても活躍。自身の2つの志を見事に達成している。自分の人生をふり返って考えてみるうちに、誰でも自分が大切にしたいと心から思えるようなことが自然と見えてくるものだと池田氏はいう。それさえ掴めれば、人は誰もが一流になれると池田氏は語る。

 夢をかなえるには、しっかりと努力する目標の定まった夢を描く必要がある。彼はこれを「背骨のある夢=志」とよんでいる。人は、志があれば、挫折をすることはない。なぜなら、志を実現する手段は一つではないため、あることがダメになったときでも次の手段を考えられるからだ。たとえば、「プロのサッカー選手になる」というのは、多くの少年たちにとっては叶えることが難しい夢に過ぎない。しかし、「サッカーを通じて人々に感動を与えたい」とか「サッカーによって人々に勇気を与えたい」という思いは立派な「志」である。「志」を成し遂げるための方法はいくらでもある。「志」を持ち、自分の人生を自分ごととして真剣に考えることがより良い毎日を送ることにも繋がるのだ。

 若者の中には「夢」など見ている場合ではない、「安定」を求めるべきだと思う者もいるかもしれない。しかし、それは本当に自分自身が望んでいることだろうか。自分で考えるのが面倒になって、誰かがつくった流れに乗っているだけではないか。「今後の見通し」として立てた判断は実は「現在の状況」に基づいた判断に過ぎないことが多い。夢を描く前、あるいは夢を描いた後に、自分がその夢をなぜ実現したいと思っているのか、折に触れて検討し、思いを深めれば、自分オリジナルの志がしっかりとした形で見えてくるだろう。

 確実に夢をかなえていくことを望んでいるならば、限られた時間の中で最大の力が達成できるような目標を立てる必要がある。目標は具体的なほど、良い。池田氏は、いつも達成までの道程を仮説として考え、あらゆる方法を考えている。自分の目指している方向に現象を動かすには、どういうことをどこで行えばいいか。そうして、自分なりの戦略や計画を考えたら、次はそれを実行に移してみる。そうすると、自然と、自分が立てた仮説のまちがいやおかしさなど問題点がよく見える。それに修正を加えることで、仮説はより実際に近いものになるのだ。夢へと手が届きそうな自分に気が付くことだろう。

 新しい挑戦を支援する動きが活発になれば、必ずや日本全体が元気になるだろう。ビジネスパーソンのみならず、これから働くことになる若者こそが読むべきこの本に書かれているのは、当たり前のことばかりだと最初は思うかもしれない。だが、見失いがちな大切なことを積みかさねることこそが夢を「かなえる力」なのだろう。さぁ、若者たちよ、大志を抱け!自らの人生について自分で考え、自分で決めれば、夢は、かなう。

文=アサトーミナミ

『かなえる力』(池田弘/東京書籍)