「新宿鮫」の作者が書くルパンも! ルパン三世の小説作品

映画

更新日:2014/9/10

 小栗旬主演の実写映画版『ルパン三世』が8月30日より公開されている。

 モンキー・パンチによる原作漫画の連載がスタートしたのは1967年のこと。その後、1971年にTVアニメ第1シーズンが製作され、1978年に始まった第2シーズンによって「ルパン三世」は国民的番組の地位を確立する。多くの人はルパンというキャラクターをアニメで親しんでいるだろう。だが、アニメ以外にも小説、ゲーム、果てはミュージカルと、「ルパン三世」は様々なメディアに登場してきた。

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 そこで今回は小説化された「ルパン三世」にスポットを当て、現在新刊書店で入手可能な『ルパン三世』の小説作品を2つご紹介する。

 まず1冊目は7月に発売されたばかりの『ルパン三世 The Novel 謎の宝石と伝説の王国』だ。作者は『T.R.Y』で横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビューした井上尚登である。

 世紀の大泥棒、ルパン三世はニューヨークの博物館で特別公開されるダイヤモンド“天使の涙”に目を付ける。“天使の涙”には薄片が埋め込まれており、そこには神からのメッセージが書かれているという伝説があるのだ。ルパンとその一味は博物館から“天使の涙”をまんまと盗み出すが、逃走の最中にエイミー・ローレンスという美少女がくっ付いてきてしまう。エイミーの目的は一体何なのか。さらにダイヤを持つルパンの前に、史上最悪の傭兵集団と呼ばれる“ギザン騎士団”が現われ、ダイヤを巡るルパンの冒険は途方もないスケールへと広がることになる。

 宝石と滅亡したある国の王族を繋ぐ伝説、ルパンと可憐な少女との交流、不気味な暗殺集団との死闘と様々な要素がてんこ盛りの活劇は、あの名作映画『カリオストロの城』を髣髴とさせる。スリルを愛し、弱い者には限りない優しさを見せるロマンチストとしてルパンは描かれており、TVアニメ・映画のファンでもすんなりと小説世界のルパンに馴染むのではないだろうか。

 もう1冊は双葉社より2005年に刊行された『小説ルパン三世』。(現在は双葉社文庫に収録)こちらは人気作家5人による競作アンソロジーである。

 収録作のうち、特にお勧めなのは大沢在昌「拳銃稼業は楽じゃない」と光原百合「1-1=1」の2編だ。前者はある独裁国家にルパンと共にやってきた次元が、早撃ち大会で因縁の男と宿命の対決をする、というもの。「新宿鮫」シリーズなど硬質なハードボイルドを得意とする大沢らしい、ニヒルな次元の魅力を十二分に引き出した作品だ。クールなガンファイト場面は、次元ファンなら必読である。後者はルパンと若き金庫職人の知恵比べが展開される。穏やかな筆致ではあるが、丁々発止の頭脳戦が実に熱く、原作漫画にあったゲーム性を最も引き継いでいる小説ルパンといえるだろう。

 このほかにもクライムコメディの要素が光る新野剛志「バンディット・カフェ」、息もつかせぬアクションが満載の樋口明雄「深き森は死の香り」、SF・ファンタジーなど「なんでもあり」な作風がTVアニメ第2シーズンを連想させる森詠「平泉黄金を探せ」と、多彩な物語が揃っている。

 作者の持ち味によって、異なる魅力をみせる小説版ルパン。次はどんな作家が「ルパン三世」の小説に挑戦するのだろうか。

文=若林踏