いつまで女子っていってるつもり? 女たちよ、エッジを立てろ!【花千代×ヴィヴィアン佐藤トークショーレポート】

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

ヴィヴィアン佐藤氏(左)、花千代氏(右)

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(ジェーン・スー/幻冬舎)が出版されるなど、「いつまでも女子ってどうよ?」という風潮が高まっている。その流れに先鞭を着けたのが、2014年4月に上梓された『若さを卒業すれば女はもっと美しくなる』(花千代/阪急コミュニケーションズ)だ。

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新橋の売れっ子芸者だった花千代さんは32歳で芸者を辞め、単身フランスへ留学。現在はフラワーアーティストとして活躍している。自身の体験をベースに、「女子から卒業し、成熟を目指しましょう」と優しくも厳しい言葉に溢れる本書の刊行を記念し、9月10日に下北沢の書店「B&B」で、非建築家として様々な活動を行うドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤さんとの「いつまで女子っていってるつもり?」と題したトークショーが開催された。お2人とも頭に羽根飾りという艶やかな姿で登場し、会場が一気に華やいでスタート!

花千代さんがフランスへ留学した際に驚いたのは、年齢を重ねたマダムたちが幅を利かせていたことだったそうだ。若さではなく、努力や自分の力で積み重ねてきた個性が魅力であるということに対し、ヴィヴィアンさんは「人間というのはいびつな多面体で、大きな面や小さな面があって、それをどれだけ自分で認識しているかが自分を知ることであり、それが個性になる」と語る。そして昨今話題になった「美魔女」は外面だけを若作りしているだけで、本当の意味での「成熟」とは、内面と外面がフィットすることにあり、それは「若々しく見えることではなく、いくつになっても枯れずに、生命体としてビビッドに光り続けることが大事」と花千代さん。そして「自分を女子と言い続けるのは、それが日本では楽なことになっているからなのでしょう」と指摘し、成熟ということを知るためには、アカデミー賞の外国語映画賞を受賞した映画『グレート・ビューティー/追憶のローマ』を観るべし、と盛り上がった。

さらに、女性が「女子」にこだわり、日本では楽なことになっているのは「男性にも責任がある」「男性が成熟しないと、女性の意識が“若さ”だけに行ってしまう」というヴィヴィアンさんに、「若い女性が好き、というのが日本の男性の主軸で、そこに女性は合わせてしまっている」と言う花千代さん。ヴィヴィアンさんは「男性ありきではなく、女性は自立して、自分のために生きるべき」、それを受け「なんで万人受けをする必要があるのか? 100人の男の人と付き合うわけではない、たった1人、自分とピタッと合う人に会えればいいんです」と力説する花千代さん。さらにヴィヴィアンさんは「万人受け、つまり最大公約数というのは、なんの個性もないビジネスホテルのアダルトビデオのようなもので、それを求めるというのはとてもLOWなこと」と一刀両断!

 男性が「今日の服装、素敵だね」と女性のちょっとしたところを褒め、フィーリングを言葉にできると日本はちょっと元気になるのかな、という花千代さんは、早朝のフランスのシャンゼリゼ通りで、目的の店までの100メートルの間にナンパをされまくり、辿り着くまでになんと20分もかかってしまったというエピソードを披露。シャネルのスーツにエルメスのバッグという「女として武装した格好」だったにも関わらず、最後は清掃車で作業していた男性に「あと10分で仕事が終わるから、お茶でもどうかな」と声をかけられたそうだ。花千代さん「ハネられるとか拒否されるのがコワイと思わずに、興味があれば話しかけてみればいいの! そのためには“これしかない”と思い込むのではなく、価値観の多様化を認めること」と、会場にいた男性を叱咤激励した。

お2人は「成熟するということは、エッジを立てるということ」と口をそろえる。「個性の立った女性は避けれられるのではないか?」という不安に、ヴィヴィアンさんは「それで遠ざかる男など眼中に入れなくていい。人類史上まれに見るほどマニアックな人には寄ってこないかもしれないけど、それは天才と呼ばれる人。そういうことは普通ありえない」と笑い、花千代さんは「何をフォーカルポイントにするのかを決め、特定の人にアピールする人が幸せになれる」と、若さに固執せず、個性を尊重し、成熟することを促す。仏教では自身を客観的に見る「第三の目」が眉間にあるそうで、そういう視点から自分を客観視し、俯瞰から見ることができれば、「見た目が美しいといったビジュアルではなく、内面と外面のすべてがしっくりいくことを追求できる。それこそが成熟なんです」ということで、2時間15分という長丁場のトークショーが終了した。

話の中では、ボードレール、三島由紀夫、ルノワール、モンドリアン、田中泯、戸川昌子、クエンティン・タランティーノ、ビョーク、ジャン=ポール・ゴルチエといった人たちの名前が飛び出し、花千代さんが館内の花を担当する「ザ・ウィンザーホテル洞爺」が建つ北海道のポロモイ山や、ヴィヴィアンさんがまちおこしをしている青森県七戸町や夏泊半島のこと、恐山のイタコとカミサマ、そして映画や美術の話から自殺に関することなど様々な話題が次から次へと繰り出された。「この話はいったいどこへ行くのか?」とハラハラしたが、最終的にはしっかりとテーマへ着地していた。そうした幅広く深い教養こそ、人を引きつける「成熟した女性だけが持つ魅力」なのだと思わされたトークショーだった。

取材・文=成田全(ナリタタモツ)