清純ビッチが恋愛幻想を打ち砕く! 『あそびあい』の魅力

マンガ

公開日:2014/10/16

 「付き合うってなんだっけ?」言葉にするとなんとも青臭いが、新田章の『あそびあい』は、そうした問いを読者に残酷なまでに突きつけ、「恋愛」をえぐる!!

 主人公は、欲望と快楽に正直すぎて、誰とでもエッチしてしまう女子高生のヨーコ。そんな彼女にどうしようもなく恋をしてしまった山下は、その「誰とでも」の一人だ。セフレから恋人に昇格しても、山下の気持ちは一方通行。ヨーコは「付き合ったらなんで他の人とエッチしちゃダメなの?」と悪気なく山下に聞いてしまう……。

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 もし、ヨーコがステレオタイプの悪女として描かれたのなら、マンガの中の出来事として、「山下、お気の毒!」くらいの気持ちで読めるのだが、ヨーコは、見た目も性格もごく普通の女子高生。セックス観は一般的な倫理からズレているが、それもある意味、既存の恋愛観にとらわれず、純粋だからこそ。「ビッチ」という言葉で括るには、清純すぎるのだ。そんなヨーコが、恋愛幻想を打ち砕く人間の本音を、あっけらかんと言い放つからこそ、読者の胸に突き刺さるのかもしれない。

 清純だけどビッチなヒロインは、三角関係を描いた『うそつきパラドクス』のヒロインにも共通する要素だ。本作も恋愛の概念そのものを問い直す作品であったが、ここ数年、こうしたストレンジラブストーリーは豊作だ。

 性に対する考え方が多様化しているからこそかもしれないが、恋愛の苦悩が普遍的なことは、『あそびあい』を読んでも、痛いほど分かる。

文=倉持佳代子/ダ・ヴィンチ11月号「出版ニュースクリップ」