“意外性”こそキャラクターの魅力!? 『七つの大罪』鈴木央インタビュー

マンガ

公開日:2014/10/18

 10月よりTVアニメがスタートした『七つの大罪』。『アーサー王伝説』をモチーフにしたファンタジーを連載することは、デビュー時からの作者・鈴木央(なかば)氏の念願だったという。『ダ・ヴィンチ』11月号ではいかに作品がヒットしたのか、その世界観の魅力と制作秘話に迫っている。

 物語は中世ヨーロッパを舞台に〈七つの大罪〉と呼ばれるお尋ね者をめぐって展開していく。かつてリオネス王国の最強騎士団だったが、10年前に王国転覆を謀った罪により、伝説の逆賊として追われる身となった7人だ。

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 しかしどんな大悪党かと思いきや、主人公「憤怒の罪(ドラゴン・シン)」のメリオダスの風貌は、年端もいかない少年。次に登場する「嫉妬の罪(サーペント・シン)」のディアンヌは見上げるような巨人だが、ツインテールが可愛らしい女の子。かようにことごとく予想を裏切るキャラが登場するのだ。作者の鈴木央さんはファンタジー作品を連載するにあたって、キャラ作りを何より重視したそうだ。

「デビューしてから数年間、何を描いても編集部にボツを出される日々が続いたんです。『七つの大罪』は『アーサー王伝説』をモチーフにしたファンタジーで、実は15年前にも同じモチーフで連載会議に出したことがある。けっこう新人が陥りやすいパターンなんですけど、当時の自分はファンタジー設定ばかり考えていて、キャラ作りがぜんぜんできてなかった。キャラが描けるようになるまで、ファンタジーには手を出さないほうがいいと判断したんです」

 その後、央さんはゴルフを題材とした『ライジングインパクト』で連載デビューし、その後もフィギュアスケートや剣道のスポーツもの、あるいは格闘技といった現代ものを多く描くことになる。

「ごく普通の現代が舞台だと、個性的なキャラを描かない限り物語が進んでいかないんです。自然とキャラを描く練習になりましたね」

 そうした連載作の以前、読み切りでファンタジーばかり描いていた。それを読んだ『週刊少年マガジン』編集者が、央さんにファンタジーものの連載を依頼。ただし『マガジン』でファンタジーはちょっとキツイかもしれない」というムチャな依頼だった。

「ファンタジーの連載を勧めてくれた編集者が初めてで嬉しかったし、当時はもうキャラを描けるという自信があったんです。でも、『マガジン』は少年誌の中でも大人の読者が多い雑誌なので、下手をすると一瞬で連載終了になるかもしれないという話でした。どうすれば大人にも受け入れられるファンタジーを描けるか。大人の読者に拒否反応を持たれないように、ファンタジー用語は極力出さず、キャラで魅せていく描き方で連載に踏み切ったんです」

 キャラ作りで央さんが意識したのが“意外性”だ。主人公側が逆賊で、それを追う敵側が聖騎士という、普通に考えると逆ではないかと思わせるような設定が象徴的だ。

「聖騎士が主人公で各地の悪いヤツを倒していくという話だった場合、それこそ上司の命令で動いているだけで、自分の意志がない。組織の枠にとらわれない立場というと、やっぱり体制からは悪党だとみなされる。自分で判断して自分なりに行動しているキャラのほうが面白いと思うんです」

 同誌では、早くも続編の構想あり!と作者が明かし、物語の謎や今後の展開に迫っている。

構成・文=大寺 明/ダ・ヴィンチ11月号「コミック ダ・ヴィンチ」