1万時間の法則はウソ? 20時間で新しいスキルを習得する方法とは

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公開日:2014/10/24

 “1万時間の法則”は知っている人も多いだろう。

 フロリダ州立大学のK.アンダース・エリクソン博士が考案した“1万時間の法則”は、1つの分野でプロレベルになるためにはおよそ1万時間の練習を必要とするというものだ。あらゆる分野で成績の良いプロに調査を行った結果1万時間という数字が出た。誰だって1度はプロとして活躍することに憧れるだろう。しかし、輝かしい成績も1万時間の練習の上に成り立っているとしたら、新しいことをはじめるのに戸惑ってしまうのではないだろうか。途方もない時間だと思う人のほうが多いはずだ。

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 この“1万時間の法則”の反対に位置するのがベストセラー作家のジョシュ・カウフマンが唱える“超速スキル獲得法”だ。『たいていのことは20時間で習得できる』(ジョシュ・カウフマン:著 土方奈美:訳/日経BP社)では、TEDスピーチで行われ話題となった“超速スキル獲得法”について細かく書かれている。本書から20時間で新しいスキルを習得する方法を詳しく探ってみよう。

 そもそも“1万時間の法則”は正しいのだろうか? “1万時間の法則”は『天才! 成功する人々の法則』(マルコム・グラッドウェル:著 勝間和代:訳/講談社)がベストセラーになったことで広まったもの。日本でも話題になった。しかし、この“1万時間の法則”はあくまで“プロレベル”になることを対象としている。スキルを獲得するだけでは1万時間必要はないとカウフマン氏は言う。とはいえ、20時間は新しいスキルを身に着けるのには短すぎるような気もする。1日に満たない時間で新しいスキルを身につけるにはどのようにすれば良いのだろう。

 超速スキル獲得方法には10個のルールがある。

1、 魅力的なプロジェクトを選ぶ
関心があって、やりたいことをやる

2、 一時に1つのスキルにエネルギーを集中する
まとまった量の時間と関心を集中的に注ぎ込むことが必要

3、 目標とするパフォーマンスレベルを明確にする
これで十分と思えるレベルを簡潔に示しておく

4、 スキルをサブスキルに分解する
たいていのスキルは、小さなサブスキルが束になったものだ。練習をはじめる前にスキルを小さく分解し、初心者に必要ないスキルなどを省く

5、 重要なツールを手に入れる
効率よく練習するために準備すべきツール、要素、環境を揃える

6、 練習の障害を取り除く
例えば、テレビ、電話、メールの着信音を取り除く

7、 練習時間を確保する
意識的に時間を作るようにする。付加価値の低い時間を洗い出し意識的になくす

8、 すぐにフィードバックが返ってくる仕組みをつくる
プログラミングのようなスキルは、すぐにコンピューターがうまくいったか否かを判断してくれるのでフィードバックが早いシステムといえる

9、 時計のそばで一気に練習する
初心者は特にうまくいかないと時間が長くかかっているように感じたりする。時間をはかって挑戦する

10、量と速さを重視する
完璧にやらずこれで十分という程度を意識する

 この10個のルールを中心に、カウフマン氏は新しいスキルを獲得していった。

 本書には、ヨガ、プログラミング、タッチタイピング、囲碁、ウクレレ、ウィンドサーフィンの7つのスキルについてカウフマン氏が実際に獲得した方法について書かれている。どのスキルも20時間でカウフマン氏の目標レベルには達している。もちろん、目標レベルが低すぎるわけではない。ウクレレはコードを覚え多くの曲を弾けるようになり、ヨガでは基礎を学びいくつものポーズを覚えることができた。

 新しい何かをはじめたいと思うなら、まず20時間作って試してみよう。20時間を過ぎて、もっとスキルを極めたいと思えば1万時間だって悪くないだろう。何かをはじめるのに時間がないからと断念したことがある人には、ぜひ読んでほしい1冊だ。

文=舟崎泉美