小川洋子や東野圭吾も…作家が憑りつかれる数学の魅力 『パラドックス13(サーティーン)』など

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

『博士の愛した数式』 小川洋子/新潮社)

『博士の愛した数式』(小川洋子/新潮社)

公式の暗記や筋道を立てた証明、そして必要不可欠なひらめき。難解なイメージがつきやすく、どうしても敬遠されがちな「数学」。だがその論理には、物語を読み解くような美しさが秘められているのだ。『ダ・ヴィンチ』11月号では、そんな意外と知られていない身近な「数」に親しむ文庫を特集。ここではその中から、数字や算数をテーマにした小説を6冊紹介。時空を超えて思いも寄らぬ方向へ動き出す、奥行き深い物語を堪能してほしい。

■『博士の愛した数式
小川洋子 新潮文庫 490円(税別)
事故により、記憶が80分しかもたない博士のもとで働く家政婦は、博士にとって、常に初対面の家政婦だ。最初こそ、その関係性は平坦なものだったが、彼女の息子の存在がきっかけで、数式のような変化が現れ……。博士、家政婦、彼女の息子が育んだ大切であたたかな時間を描いた物語。

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■『パラドックス13(サーティーン)
東野圭吾 講談社文庫 830円(税別)
「『日本時間で、三月十三日の午後一時十三分十三秒』にP-13現象が起こる。だが誰も何が起こるのかは予想できない」。そしてその時刻、東京は破壊し、街は壊れ、人は消え、13人の男女が残った。数学的矛盾=パラドックスを機軸に、新しい人生を生きる13人の葛藤、苦悩、その後を描いた作品。

■『数の風景
松本清張 角川文庫 705円(税別)
板垣は石見銀山を調査するため断魚荘に宿泊することになった。そこで出会った自殺志願者の自称画家の谷原、そして計算狂の女・梅井きく。3人は、それぞれの目的、思惑こそ違うが、この場所に宿泊したことで、事件や殺人が起こり数奇な運命を辿ることになる。それは偶然か、それとも……。

■『算数宇宙の冒険 アリスメトリック!
川端裕人 実業之日本社文庫 686円(税別)
東京23区の端にある桃山町では、人知れず小さな奇跡が起きる。ここで暮らす小学6年生の空良とユーキ、アランの3人組は、ひょんなことからワンダー3を結成。そこに謎の転校生が加わり、算数宇宙杯に参加することになった。彼らは戦士で、武器は算数。空良たちは算数宇宙杯で勝ち残れるのか?

■『七回死んだ男
西澤保彦 講談社文庫 629円(税別)
大庭久太郎は、同じ日が何度も繰り返される体質である。それを“反復落とし穴”と呼び、御利益を得ていたりもする。だがある日、何度も同じことが繰り返されるはずだったのに、“あるはずのない”殺人事件が起きてしまった。殺人事件を起こさないために久太郎はあらゆる手を尽くすのだが……。

■『四段式狂気(よんだんしききょうき)
二宮敦人 角川ホラー文庫 520円(税別)
女子高生のマユリは、ストーカーに悩んでいた。マユリは親友であるギンちゃんにそれを相談し、少し安心する。マユリはパパとふたり暮らしだ。パパはそのせいか、少し過保護である。いっぽうコンビニ店員のリョウタも対ストーカー警護を始めるが。4度反転する狂気の世界を描いたミステリー。

構成・文=大久保寛子/ダ・ヴィンチ11月号「文庫ダ・ヴィンチ」