キャラを完全再現!? 能年玲奈主演 映画『海月姫』の魅力

マンガ

更新日:2014/12/14

 あの『海月姫』がついに実写映画化された。ご存じのように、作者はマンガ界を代表するヒットメーカー・東村アキコ。既刊14巻まで発売されている単行本は、累計発行部数325万部を突破。2010年に第34回講談社漫画賞少女部門を受賞し、同年放映されたTVアニメも好評だった。映画で主演を務めるのは、国民的女優・能年玲奈。さらに菅田将暉長谷川博己をはじめ、ゴージャスな競演陣が大集結した。

 原作の面白さの第一は、何といっても主人公・月海と“尼〜ず”のオタク女子全開なキャラクターだろう。マンガの映像化というと、ファンにとってはイメージが壊れるのではという懸念が付きまとうが、この『海月姫』ではまったくの杞憂でしかない。キャスト全員が、動きから言葉遣い、雰囲気までキャラクターのすべてを完全に再現している。

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 内気でクラゲを溺愛する月海、日常のすべてが三国志なまやや、鉄道と高級肉に目がないばんばさん、つねに中腰で優しく微笑むジジ様、和裁が神懸かり的に上手い千絵子。能年を中心に、池脇千鶴、太田莉菜、馬場園梓、篠原ともえが最強のタッグで“3次元尼〜ず”を創り上げている。失礼ながら、事前に聞いていなければ彼女たちとわからないほどの完成度だ。

 尼〜ずに負けず劣らず濃いキャラなのが、月海が出会う政治家一族の鯉淵兄弟、蔵之介と修だ。弟の蔵之介は女装男子、兄の修はエリートだけど童貞。これまた菅田将暉長谷川博己が恐ろしく完璧な再現性を誇っている。原作で「お姫様のよう」と評される菅田の女装は違和感がないどころか大変美しく、水族館の水槽の前でクラゲの真似をする長谷川は衝撃のお宝映像だ。

『海月姫』の魅力は、ただ笑えるというだけではない。物語では、尼〜ずの聖地・天水館が再開発で取り壊しの危機に直面する。ここで尼〜ずを救うのは、蔵之介だ。天水館の中では絶好調に賑やかだけど、オシャレ人間がウヨウヨいる外の世界では殻に閉じこもってしまう、残念な尼〜ず。ご褒美で釣り、あるいは怒鳴り、蔵之介の激しいパワーが彼女たちを少しずつ変える。天水館は蔵之介にとっても〈居場所〉であるから。

 月海は蔵之介のファッション&メイク術で美女に変身し、眠っていた服飾デザインの才能も開花させる。彼女にとって、蔵之介はお姫様か魔法使いか王子様か。修と蔵之介、月海の微妙な恋の行方も、『海月姫』の素敵なテーマだ。

 大切なものを守るために尼〜ずが奇跡を起こす。オタクパワーは、勇気と夢と希望の源。彼女たちのシンデレラ・ストーリーを原作と映画、併せて堪能したい。

取材・文=松井美緒/『ダ・ヴィンチ』1月号「コミックダ・ヴィンチ」より

ダ・ヴィンチ

『ダ・ヴィンチ』2015年1月号

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※ダ・ヴィンチ1月号では、監督・川村泰祐のインタビューを掲載
『海月姫』の魅力を徹底的に掘り下げています!