『妖怪ウォッチ』キャデザ長野拓造さんが伝授「ジバニャンの描き方」! 耳欠け腹巻きがあればOK【後編】

マンガ

公開日:2014/12/28

 今年、もっともかわいいと評判のキャラクタージバニャン。ちまたでは、さっそく似顔絵合戦となっている。だが、人気の一方で、その難しさにコマっているズラ、との声も聞かれる。どのように描けば、“本物”に近づくことができるのか?

前編に引き続き、『妖怪ウォッチ』キャラクターデザイナーの長野拓造さんが直伝してくれた。ジバニャンを描くコツを、教えてニャン!

▲2013年に発売されるやまたたく間に大人気となった『妖怪ウォッチ』

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>>【前編】生みの親・長野さんが語る「ジバニャン」誕生秘話

■長野さんにも難しいジバニャン

「僕もジバニャンを描くのは難しいです。子どもに描いてあげても“似てる! 上手だね”って言われます(笑)。本当はマネして描きやすいキャラを目指していたはずなのですけど……。タテヨコの比率や、目の位置がちょっと高めなところが描きづらいのかと思います。でも、僕も気分によって“今日は目を大きくしちゃったかな”ということもありました。僕ですら安定してないので、みなさんも難しいのかな」

 では、ジバニャンを描くときのポイントとは?

「細かいことは気にしなくていいです。ざっくりと赤と白の顔。それにシッポ2つと耳の片側を削って、腹巻きを描いてもらえれば、雰囲気が出ると思います。子どもにマネしてほしかったので、あえて細かくデザインはしていませんので」

▼これが本家直伝! ジバニャンの描き方だ

1、気持ち下がふっくらしたお饅頭のような円を描きだいたい三等分間隔で耳をつけます。

2、目の位置、この絵では真ん中より少し下に配置します。耳の付け根の下の位置を目安に程よい大きさの円を描いてみました。それに合わせて、真ん中に鼻・口・そして火の玉のイメージの顔の模様を描きます。

3、白目の幅に注意しながら黒目を描きます。鈴のようなカプセル、首輪、そして前掛けのように白いブチの部分を描きます。大きすぎないように。

4、体は油断すると太りがちなので縦と横のバランスを見ながら描きますが、小さくかわいければ良いと思います。

5、しっぽを左右に描いて火の玉をつけて、程よい幅のハラマキと、手足の模様を入れれば線画の完成です。火の玉のうずは色を付けるときに描きます。

6、着色して完成!

■似顔絵を通して友達を作ろう!

 子ども達が描くことを意識してデザインされたというキャラクター。長野さんからくり返し聞かれる言葉だ。子どもにマネされたいというのは、キャラ認知で拡散効果を狙っているのだろうか。

「いえいえ、これは僕の体験にさかのぼります。自分が子どもの頃、『キン肉マン』というマンガが流行っていました。このキャラは、おでこの“肉”も含めて真似しやすく、そのキャラクターだと分かる、すごくわかりやすい記号がありました。だからマネして描いていると友達から、“あ、キン肉マン描いてる”って話しかけられて。そこから会話が弾んだり。絵を通して友達とのコミュニケーションが生まれました。大人になった今でもその体験は、子ども時代のいい思い出です。自分の経験から、こんな遊び方もあると思ったので、覚えてマネして欲しいと思います」

 そのマネしやすさは、太い輪郭線にもこだわりがある。なぜなら、子どもは鉛筆で描くからだ。

「自分が子どもの頃、マネしようと思っても、元のマンガの絵に似ないんですよ。なぜかというと、僕は先が丸くなった鉛筆で、筆圧強く太い線で描いていたから。だから、ペンで描いたような細い線は描けなくて」

▲好評公開中『映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』でも大活躍のフユニャン。これも長野さんのデザインだ!

■入社直後に1000万本越えのヒットを制作!

 絵を描くのが好きだったという長野さん。その後はマンガ家を目指すもストーリーづくりに苦戦。イラストレーターを目指すなど行き先に迷う日々を送っていた。そこへ転機が訪れた。

 レベルファイブ社長で『妖怪ウォッチ』クリエイティブプロデューサーの日野晃博氏のCMを見てからだという。

「ゲーム『ローグギャラクシー』のCMを見てすぐに、“この人のもとで働きたい”と、入社を決めました。自信をもって自社の作品を世の中に発信している姿を見て、楽しんでモノづくりをする会社だと思ったんです。入社してからは天国のようでしたね。楽しくって、人に認められて、子どもの喜んでいる姿を見られて。今でも僕は出社する度に、『ドラゴンクエスト』オープニングのファンファーレが頭のなかで鳴らして、毎日テンションを上げています。」

 人がうらやむ理想的な働き方だ。だが意外なことに、ゲームにそんなに親しんでは来なかった。しかしそれが強みともなった。

「子どものころは、ファミコン禁止の家でした。だから親戚の家で、『ゼルダの伝説』などを徹夜でプレイして。小学校高学年でゲームの楽しさを知りました。でも、入社するまではそんなにゲームをしていません。だからこそ、『レイトン教授』シリーズを作れたと思います」

 シリーズ国内外累計出荷本数1550万本以上を記録する大ヒット作品。実は長野さんが本格的にゲーム制作にかかわったのが同作だ。

「入社まもないころ、日野に呼ばれ“100万本売れるタイトルを作ろう”と言われて、キャラクターデザインの社内コンペに参加することになりました。入ってすぐに巡ってきたチャンスなので、“ものにしてやろう!”と意気込んで。
 でも僕は無知というか世間知らずで、100万本の意味を分かっていませんでした。100万本も売る難しさを。でも、今まで見たことのあるようなものでは厳しいだろうなと思いました」

 そのコンペでは、キャラクターはもちろん、作品の世界観も自由に提案できた。そこで長野さんは、ゲームをしない人の目線で手にとってもらえるような作品を目指す。そして誕生したのが、まるで本を読み進めるかのようなゲーム『レイトン教授と不思議な町』である。

「自分で本当に面白いと思いながら作っていました。だから発売当初、期待していた程は売れなくて残念でした。でも、シリーズを重ねてプロモーションで認知が高まるとどんどん売れていきましたけど」

▲大ヒットシリーズ最新作は『レイトン教授と超文明Aの遺産』

■こだわりは、子ども時代の自分へ発信

 その後、『イナズマイレブン』シリーズや『妖怪ウォッチ』などのタイトルに携わるようになる。作品が変わっても長野さんが大切にしていることがある。

「今の子どもと、子どもだった自分に向けて作品を作っています。当時の自分なら、この作品についてどう思うか。メチャクチャ好きになってもらわなくてもいいんです。でも、マネしたくなるとか、集めたくなるとか。多くの人は、昔の自分が好きだった、古くてダサイものをみんな切り捨てて、忘れていると思うんです。新しく進化する方向ばかり目を向けて。でも、子どものとき影響を受けたものを思い出すと、ニュートラルな目線に立てるというか。自分本位ではない目線になれ、ものづくりにすごく役に立っています」

 キャラクターデザインを目指す人は多い。けれど、売れる作品を作るには、広い視野に立たなければならない。長野さんが若手に求めるのは、こんなスタイルだという。

「1枚の絵でも見る人を、ワクワクさせられるかどうか。人を楽しませる絵か、自分だけを満足させる絵になっていないか考えて欲しいですね。偉そうなこと言ってしまいましたけど!(笑)」

 自分の子ども時代の感覚を大切にしているという長野さん。ゲームから学んだことも多いという。

「制限された子どもの世界に比べ、ゲームのなかでは自由に動ける。ゲームによってすごく世界が広がった気がします。また“クリアする楽しみ”を知りました。作戦を立てて、困難を解決する楽しさです。現実の生活でも困難なことがあり、それをクリアしていかなければ先に進めないことが多々あります。そういうとき“あのゲームを遊んだときに似ている”と思い、楽しみながら困難と向き合っていけました。だから、ゲームをやっておいて良かったと大人になっても思いますね」

 様々な娯楽のあるなか、ゲームは戦略的な考えを養ってくれる。読書や映画鑑賞とはまた違うエンターテインメントとして、今後も長野さんの手がける作品に注目したい。

>>【前編】生みの親・長野さんが語る「ジバニャン」誕生秘話

取材・文=武藤徉子

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▲2013年に発売されるやまたたく間に大人気となった『妖怪ウォッチ』

詳しくは『妖怪ウォッチ』シリーズ公式HPにて

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