2015年は柴犬おじさんがくる!? 哀愁漂う姿に思わず涙が止まらない

マンガ

公開日:2015/1/3

 2014年は『サラリーマン山崎シゲル』『おじさんとマシュマロ』など、おじさんが登場する話題作が多数発表され、にわかにおじさんブームの萌芽を感じさせた。

 2015年に注目したいのが「柴犬×おじさん」という斬新な組み合わせで、中年男性の日常をユーモラスたっぷりに描いている『しばおっちゃん』(ねこまき(ミューズワーク)/実業之日本社)である。

advertisement

 作中に登場する男性は、なんと結婚を機に徐々にその姿が柴犬へと変化してしまうのだ。通称しばおっちゃんと呼ばれる彼らは、もふ可愛らしい容姿とは裏腹に現実の中年男性と同じく常にどこか哀愁が漂う。

 家庭の実権は妻に握られ、タバコを吸おうものなら家から追い出される。しかたがない、喫茶店でひと息…と思いきやポケットを探るも小銭しかなく、河川敷にはいつしか家を叩きだされたしばおっちゃんたちが、カップルが等間隔で並ぶ鴨川よろしく無言で夕空を見上げながら煙を燻らせる。

 新入社員はLINEでしかコミュニケーションを取ってくれない上にタメ口全開。取引先に向かわせれば相手を怒らせ、菓子折りを持って謝罪に行く羽目になる。さとり世代の理解出来ない行動に疲弊する毎日。行きつけの立ち飲み屋のマスターに「今の会社向いてないかも」と愚痴りたくもなります。聞いて欲しかっただけです。守るべき家庭があるしばおっちゃんは辛くても頑張るのです。

 更には子を持つ中年男性の定番、年頃の娘問題。蝶よ花よと育てたはずなのにことあるごとに疎まれ、もふ可愛い容姿さえ「キモッ この毛虫オヤジ」と罵られる。娘の友人が遊びにくるとなれば、家が臭くなるからとトイレに入ることさえ禁じられる始末。かと思えば極上の笑みで物品を要求してくるその姿に、娘を持つ男性は思い当たる節がたくさんあるのではないだろうか。

 などなど、悲哀に溢れるエピソードは枚挙に暇がない。もふもふの柴犬という愛らしい姿を持ってしても、世間の風はおじさんにはとても冷たいのだ。そう考えると丸腰の人間の姿のおじさんの苦労は計り知れない。
『しばおっちゃん』を読み終わったら、おじさんに少し優しくなれるかも?