新世紀の箱根駅伝、5区を制する“山の神”は降臨するのか!?

スポーツ

更新日:2016/3/14

 正月の風物詩、箱根駅伝。正式名称「東京箱根間往復大学駅伝競走」。往路と復路、全10区間に渡り展開される筋書きなきドラマに、問答無用で胸躍らされる2日間である。

 箱根駅伝は、1920年に第1回大会が開催された80年を越える歴史をもつ関東地区の大学対抗戦。2015年は91回大会。シード権が与えられた前年度の上位10校に、予選会を勝ち抜いた10校とオープン参加の関東学生連合を合わせた全21校で出走する。

advertisement

 今年は昨年に引き続き、青山学院大学が快走を見せ、総合優勝を果たした。連覇と全区間トップという驚くべき結果で、完全優勝を達成した。

 結果だけではなく、その過程を応援するのが醍醐味の箱根駅伝。駅伝観戦をさらに充実させてくれるのが『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』だ。現場に精通するスポーツライター酒井政人氏は、実は元箱根駅伝ランナー。選手と取材者、ふたつの目線で箱根駅伝の知られざる裏側までどっぷり踏み込んで伝えてくれ、かゆいところに手が届いたような読後感がある。

 本編は、酒井氏の選手時代をふまえたチーム内の壮絶な箱根メンバー争いから始まって、1区から10区それぞれのコースに求められる走りの戦術、箱根駅伝のレベルが急上昇した71回大会(1995年)以降の戦国時代をひもとき、熾烈な予選大会から強豪校のシステム、あえてエースを補欠登録する戦略、近年の顕著なスピード化の秘密から、かつての名選手たちの箱根後の顛末まで、“ちょっと特殊な学生駅伝ワールド”について、総括的かつコンパクトにまとめられている。

 酒井氏が注目する箱根駅伝最大の山場は、やはり、第5区の山登り区間だ。82回大会(2006年)から5区の距離が最長になった“新世紀の箱根駅伝”において、勝敗を最も左右するのはやはり5区。データを見ても5区で区間賞を獲得した選手の破壊力はすさまじく、昨年90回大会までに5区を制したチームが6回総合優勝に輝いている。読みながら、今井正人(順天堂大学)、柏原竜二(東洋大学)、服部翔太(日本体育大学)など、“山の神”の異名をとったクライマーたちの激走が思い出される。各校、今回はどのような選手が配置されるのか。5区に不安がある大学はあえてエース級の選手を配置し手堅くまとめるのではと、酒井氏は予測している。今年の覇者、青山学院大学の神野も力強い走りで沿道を沸かせた。

 激走の末、あるものは少し余力を残しながら、またあるものは足元をふらつかせ朦朧としながら、チーム全員の思いがつまった1本の襷を次の選手に手渡しする瞬間は、何度見ても胸を熱くさせられる。常人の想像を遥かに越える研鑽を積み、心身ともに鋼のように研ぎ澄まされた選手たちがゴールで魅せる歓喜と涙は今回も、年頭に熱さと余韻を残してくれるに違いない。

文=タニハタマユミ

箱根駅

現在の箱根駅伝は全長217.1km(往路107.5km/復路109.6km)。1区間平均は21.71kmという長丁場。本書には全10区間の「区間記録と平均ペース」が掲載されているので、観戦時には選手たちの走るペースもチェックしてみよう。

箱根駅

90年代以降の歴代総合優勝校。ちなみにこれまでの総合優勝回数のトップ3は、中央大学(14回)、早稲田大学(13回)、日本大学(12回)。大学勢力図は変遷しつつある

箱根駅伝

箱根駅伝はテレビ中継車2台、テレビオートバイ4台と中継所の定点カメラを中心に撮影され、OAシーンは限られる。応援する大学がなかなかテレビに映らない場合、通過順位は日本テレビの「箱根駅伝公式Webサイト」で確認するのがおすすめだそう