2015年1月1日の「相続税法」改正で、相続税を払う人が増えるってホント?

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更新日:2015/1/19

 大地主が亡くなると、所有していた土地が売られ、跡地にたくさんの建売住宅やマンションが作られることがある。それを見て「やっぱり資産家って相続税でごっそり持っていかれて大変だ。まあ貧乏なウチには関係ないけど」などと言っていたものだが、2015年1月1日に「相続税なんて他人事」なんてノンキなままじゃいられなくなるかもしれない「相続税法」の改正があったのをご存知だろうか?

 その内容だが、これまで「相続財産6000万円以上」なければ課税されなかった「相続税」が、なんと一気に40%オフの「3600万円以上」に、しかも法定相続人の「控除額」も「1人1000万円」から、こちらも同じく40%オフの「600万円」に減額された。しかも「相続税率」はこれまでの「最高50%」から「最高55%」へ引き上げられたのだ。ちょっと地価の高いところに土地があったり、退職金やまとまった預金などがあれば、相続税が一気に現実のものになるかもしれなくなった。

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 そこで、もしもの時の相続問題で慌てないために読んでおいて欲しいのが『やってはいけない相続対策』(大村大次郎/小学館)だ。本書によると、最近あちこちで節税対策として紹介されている「賃貸住宅の経営」「タワーマンションの高層階の購入」「高額な墓の購入」などは、普通に相続税を払うよりも却って損をする場合があると指摘している。「相続財産3600万円以上」「控除額600万円」「相続税率最高55%」という数字に惑わされて「半分以上財産を持っていかれてしまう!」と早合点すると、やらなくていいことをして資産を減らしてしまうことになりかねない、というのだ。

 相続税には様々な「控除」があるので、豪邸に住んでいたとしても、現金があったとしても、本書を参考にして上手に対策をすれば、相続税法改正はそれほど恐れることではないという。「じゃあ銀行から金を引き出して、それを自宅に隠し持っていればわからないんじゃない?」などとヨコシマなことを考える人もいるかもしれないが、税務署は通帳などに記載された過去全ての金の流れを調査することができるので、怪しいと思われた人は徹底的にマークされて必ず見つけ出される、と元国税調査官である大村氏は断言している(ちなみにどこまで徹底的にやるのかは、映画『マルサの女』を見ればわかる!)。

 国税庁によると、今回の法改正で相続税を課税される人はこれまでの4%から6%に増える、つまり100人中4人から6人になる程度なので、誰もが身構える必要はないかもしれない。しかし相続税を払う人は確実に増える。そして今は財産がなくても、『億男』(川村元気/マガジンハウス)の主人公のように、ある日突然宝くじで高額当選してしまったり、仕事で大成功したり、何気なく始めた投資で富を得てしまう可能性はゼロではない。何があるのかわからないのが人生なのだ。

 ちなみに今回上がった最高税率だが、1988年まではなんと75%という遺産のほとんどをもっていかれるような高さだった。それが徐々に減って50%に下がった税率が、今回55%に増えたという背景がある。今回の改正は日本が慢性的な財政赤字のため、取れるところから取る、しかも広く浅く取る、という方向へ行っていることがあるそうで、政治が絡む様々なウラがあることも本書で触れられている(その理由を知ると、少々ゲンナリすることだろう)。

 遺産相続なんてほとんどの人が未体験のまま「どうしたらいいのかわからない!」状態で翻弄され、すったもんだの挙句にやっと相続税法を理解しても、その後の人生であと1回あるかないか、というレアな出来事だ。だからこそ相続税について色々と知っておくことは決して無駄にならないし、離婚が増えている現代は遺産でモメる原因が激増しているといっても過言ではない(詳しくは本書で)。そうならないために、ぜひ『やってはいけない相続対策』を参考に、早め早めの対策を!

文=成田全(ナリタタモツ)