「ゴキブリは気温30度以上で飛び回る」!? 気象にまつわるコネタ満載の天気本

科学

更新日:2015/1/20

 私たちは「天気」に合わせて通勤・通学の際の服装を決めたり、行楽やアウトドアスポーツの日程を決めたりと、少なからず行動を「天気」に左右されている。日本の天気予報の技術は世界トップクラスで、日本で天気の予測が始まってから50余年間に蓄積されたデータがはじき出した天気の的中率は8割以上と言われているが、それはコンピュータが“実際の空を見ずに”予測したもので、日本にはまだコンピュータがない時代から言い継がれてきた天気に関することわざがたくさんある。

 私はアウトドアが好きなので、事前に天気予報をこまめにチェックするのはもちろん、現地でも天気のことわざによってその後の天気を判断したりもしていたのだが、時には大ハズレして困ったことも…。そのため常々、「天気のことわざはどのくらい信頼してよいものなのだろうか?」と疑問を抱いていた。

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 今回紹介する『アマタツさん、ネコが顔を洗うと雨が降るって本当ですか? 知ってとくする天気のことわざ』(徳間書店)は、フジテレビ『とくダネ!』の天気コーナーに出演中の気象予報士・天達武史(アマタツさん)が、誰もが一度は耳にしたことがある天気のことわざが本当に正しいのかを検証し、ウンチクたっぷりに解説してくれる“天気の雑学本”だ。その中からいくつか、特に印象的だったものを紹介しよう。

「ネコが顔を洗うと雨が降る」は本当

 このことわざは、ネコ好きならずとも一度は聞いたことがあるに違いない。ネコには狩りをする本能があり、日頃から体の手入れに余念がないが、特に雨の前になると頻繁に顔を洗うようになるそうだ。本書いわく、ネコのヒゲはとても敏感でわずかな湿気や気圧の変化も察知できるため、雨が降る前に湿度が上がると湿気でヒゲがベタついたり重くなったりするのかもしれないとのこと。また気圧や気温の変化によって体に影響が生じることで落ち着きがなくなり、気を紛らわす行為として顔を洗うようになるネコもいるのだとか。

ゴキブリは気温30度以上で飛び回る!?

 個人的に、一番ショッキングだったのはこの内容だった。本書によると、ゴキブリは元々熱帯性の昆虫のため、気温18度以上で活動を開始、25度以上で繁殖活動が活発になり、30度を超えると飛び回るというのだ(想像するのも恐ろしい…)。最近では真冬でも室温が20度を下回らないようにエアコンを設定している家庭が多く、真夏には30度以上の熱帯夜になることも少なくない。そんな日本は今や、ゴキブリが生きていくのに最適な環境になりつつあるのだ。しかし35度以上になると高温障害が出始め、40度で致死状態になるということなので、近年の猛暑はゴキブリにとってもツライようである。

東京は2年に一度、大雪に見舞われる

 2014年の1、2月に関東近郊が大雪に見舞われ、特に東京都心は積雪25センチ以上を2度も記録して交通マヒ状態になってしまったのは記憶に新しい。都心の交通網は雪に弱く数センチの積雪でも大混乱を招くが、気象庁のある東京・大手町で3センチ以上の積雪を観測したのは、1960年に観測が開始されてから54シーズンのうち27シーズン。必ずしも2年に一度大雪になるわけではないが、平均して2年に一度のペースで大雪になっているという。本書によると雨と雪の気象を分ける気温はわずか2度前後だそうだが、関東では上空が氷点下になっても地上が氷点下になることはまれなので、特に1、2月の都心の降雪予測は難しいのだそうだ。

「三寒四温」はシベリア高気圧のせいだった

 冬の終わりから春にかけては、天気予報で「三寒四温」という言葉を耳にすることが多い。これは“3日ほど寒い日が続いた後、4日くらいは暖かくなる”という気温変化を表したことわざだが、ここには気象学的にれっきとした根拠があると言う。日本列島に寒気をもたらす「シベリア高気圧」は、勢力が強まると3日間持続し、その後4日間弱まるというサイクルが特徴だそうだが、真冬には寒暖差がはっきりしない。しかし2、3月になると一部が移動性高気圧となって暖かな南風を流れ込ませ、3日ほどするとまた冬型の気圧配置となって寒さが復活してしまうのだそうだ。気象衛星もない時代、日々の温度、湿度の観測と人の感覚による天気の記録だけで今と同じ状態を言葉に表した先達の努力は、本当にすごいものだ。

 これらのほか、本書の中に収録されたことわざはメジャーなものからちょっとマイナーなものまで全81個。天気に関係した豆知識やなぞなぞなどもあり、各項目を見開きで簡潔に説明しているので誰でも読みやすい。本書を片手に、たまには空を眺めてみるのも良いかも知れない。

文=増田美栄子