チャラくても勝ちを狙えた、箱根優勝 青山学院・原監督の“ワクワク大作戦”の秘密【スポーツアナウンサー坂上俊次さんインタビュー】

スポーツ

更新日:2015/1/30

Believe your self.

「自分への疑いがなくなれば、それが自信となるのです」とは、錦織 圭選手を覚醒に導いた、マイケル・チャンコーチの言葉。選手自身のたゆまぬ努力や研鑽はもちろん、善き指導者との出会いが、第一線で闘うスポーツ選手の命運を左右することは明白だ。そしてそれは、今年の箱根駅伝での青山学院大学の劇的な初の総合優勝にも象徴されている。

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 勝利した青山学院は、驚異的なタイムで爆走した選手たちの楽しげで軽やかな表情が印象的だった。彼らを優勝に導いた原 晋監督が、これまで泥臭くストイックな色が濃かった駅伝の世界にビジネスの手法をもちこみ、「選手が想像以上の走りを炸裂させたのは、“ワクワク大作戦”のおかげです♩」と、周囲を笑顔でケムに巻いのも新鮮だった。

 そんな異色の手腕を見せる原監督の半生にも触れた本、『優勝請負人 スポーツアナウンサーが伝えたい9つの覚悟』(坂上俊次/本分社)が、今注目を集めている。スポーツアナウンサーとして数々の名指導者=優勝請負人たちを間近で見つめてきた、著者の坂上俊次(さかうえしゅんじ)さんにお話を伺った。

名監督や名指導者は、“人の心を動かす名人”

「スポーツ取材に携わって16年、実況中継でしゃべるための取材と、アスリート誌の連載取材の、両方をこなしてきました。実況中継はメインは試合なので、その日の中継を面白く見るための下取材に重点を置きます。しかし、書くための視点で話を拾っていくと、ニュースには直結しないような何気ない会話の中に、生きて行くうえで非常に参考になる話があったりするのです。選手たちを指導し、その心を動かす監督や指導者の話には、人生にとっての栄養が含まれている。よくビジネス書を開くと“人を動かすときは、こうやりなさい”と書かれていますが、それって、なかなか響いてこない部分もありますよね。でも、スポーツ指導者の言葉を通して伝えれば、読む人の心に響くのではないか。スポーツのフィルターを通して自分が得た、社会人としても役立つ情報やノウハウを詰め込んだものを、一冊にまとめたいと思ったのです。

 実際、名指導者や名監督ってみんな“人の心を動かす名人”なんですよ。いかにして選手にやる気を起こさせるのかという部分で。たとえば1日5時間勉強したら大学に受かるとか、1日10キロ走ったらトップになれるとか、よく目標を量で測るじゃないですか。でも、やらされて走った10キロと自らの意志で走った10キロでは、やはり全く違うんです。しかし今の時代、“右向け右”って言われても、右を向きたくない選手もいる。そんなとき、あまのじゃくな子にはあえて“左向け~”と言って、右を向かせてしまう。そんな、指導者の人間力や引き出しの多さが、手腕なのだと思うのです」

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