なぜBABYMETALなのか。『ヘドバン』編集長・梅沢直幸さんインタビュー

音楽

更新日:2015/2/6

鹿鳴館で体感したBABYMETALの衝撃。勢いで企画書を作り飛び込んだ

 梅沢さんが出版業界へ関わるきっかけになったのは、ハードロック/ヘヴィメタル専門誌『BURRN!』を手がけるバーン・コーポレーション(2013年に同誌の出版元は再びシンコー・ミュージック・エンターテイメントへ移行)だった。

 「元々は『BURRN!』のと同じ社内にあった書籍編集部にいました。その後、編集部がなくなると共にいったん出版業界から離れて。『ヘドバン』を創刊するまでは約7〜8年程のブランクがありましたね」

 雑誌制作の現場から離れて数年。メタルの聖地と称される目黒・鹿鳴館で行われたBABYMETALのライブにより、梅沢さんの時計の針が再び動き出した。

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「中学生の頃からメタルを聴き続けていた中で、たまたま『いいね!』(2012年3月 発売 『BABYMETAL×キバオブアキバ』収録)の動画を観た直後から『これはクオリティがとんでもない』と衝撃を受けたんですよ。余韻があるままの状態で目黒・鹿鳴館の『LEGEND〜コルセット祭り』(2012年7月 開催)へ足を運びました。当時から、開演前にX JAPANやMetallicaが流れる光景や、シアトリカルなステージ、楽曲や演出の様々なオマージュを見ても『アイドルとメタルの融合なのに、メタルと真っ向から向き合っている』という印象を受けていましたね」

 当時を振り返る中で「鹿鳴館でライヴを観てメタル界を変えるんじゃないかという直感を抱きました」と、梅沢さんは語っていた。シアトリカルとは、演劇的または劇場的な様子を指す。ステージに据えられたオーロラビジョンに映し出される紙芝居、淡々としたナレーションにより未来が示されるBABYMETALのステージを形容するにはこれ以上なくふさわしい言葉だろう。そして、鹿鳴館での衝動に駆られたまま、『ヘドバン』創刊への狼煙(のろし)は上がった。

 「BABYMETALへの衝撃を受けた時期と、出版業界で再び本を作りたいという時期がちょうど重なっていたんですよ。雑誌は昔から大好きでしたが、本屋で音楽雑誌を見ても心に刺さる雑誌がなかったんです。綺麗なレイアウトで写真をおしゃれに見せる音楽雑誌ばかりで。逆に自分は情報がグチャッと詰まっている音楽雑誌が好きだし、そういう音楽雑誌を作りたいという思いはかねてから抱いていて。ちょうどそのときに『音楽的側面やメタル側からBABYMETALをきちんと取り上げれる雑誌はないだろう』という思いも抱き、勢いに任せて書いた企画書を持って古巣のシンコー・ミュージック・エンターテイメントへ飛び込みました」

 その後、企画書ができあがってから半年程で、ようやく制作へ至ったという。インタビュー中「自分も手に取りたくなるような本が見当たらなかったので作りました」と梅沢さんは語っていたが、伝えたい、伝えなければというある意味では使命感にも似た思いが、結果として読者へと届いたからこその今があるのだろう。

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