ステージ上でぎっくり腰!? ヘルニア闘病記『ガラカルテ』ガラ(MERRY)インタビュー

音楽

更新日:2015/2/13

  • ガラ

 ロックバンドMERRYのボーカル・ガラによる初の書き下ろしエッセイ『ガラカルテ』(KADOKAWA エンターブレイン)は、彼がヘルニアを発症し、活動休止や手術を経てついに復帰を遂げるまでの約5年にわたる闘病記録だ。そこに綴られているのは、突如襲う激痛から逃れようとあらゆる治療に奔走する、バンドのボーカルとしてはやや3枚目すぎる面白エピソードの数々。と同時に、バンドと治療の間で抱く葛藤や復帰ライヴまでの不安、焦り、不自由な生活を強いられることで起こる心境の変化までもが、バンドマンらしいまっすぐな言葉で記されている。「この本を書いて気付けたことはほんとうに多い」と語る著者の、現在の心境とは。

――闘病の様子を日記に残し、それを本にまとめようと思ったいきさつを教えてください。

 まず日記を書こうと思ったきっかけですけど、これはやっぱり手術をするって決めた事が大きかったです。僕はそれまで大きな病気も入院もしたことがなかったから、2013年は自分の人生にとって間違いなく節目の年になると思ったんですよね。日記を書き始めたのは、その時の自分の気持ちを残しておきたかったから。

advertisement

 もちろん最初は本にすることまで考えていませんでしたけど、手術以降も続けていたらけっこうなボリュームになったので、これはせっかくだから形にしたいと、事務所のスタッフに話してみたんですよ。僕としては日記に当時の写真も入れていわゆるブログ本的なのをイメージしていたんですが、「ロックバンドのボーカルでめっちゃカッコつけてたのが、いきなりぎっくり腰からヘルニアになってライブ中に運ばれるなんて、そんなオモロイ話めったにないからもっとちゃんと書いたほうがいい!」って言われて(笑)。

  • ガラ

――文中にも“意図していないものが出来上がった”とありましたね。

 それは今でも思ってます(笑)。本当は、一人のバンドマンとしてのカッコいい闘病記を書こうとしてたんですよ。ずっと痛みを隠してライブ続けて、それも限界がきて手術して、復活して……っていうカッコいいストーリーが僕の中にはあったんです。それがいざ書いてみたら、俺って何も決断できない人間だし、この内容はどうなの?って(笑)。ファンが読むことを考えると出さないほうがいいのかな、とも思いましたから。

 それに、文字だけですべてを伝えるのは本当に難しかったですね。“そういえばこんなこともあったなー”なんていろいろ思い出して書き足すんですけど、そうするといつのまにか出来事の順序が入れ替わってたり、登場人物が増えたりしてるんですよ(笑)。僕も普段から歌詞は書いていたものの、本を1冊書くのは、当然ですけどそれとは全く違う作業だった。プロットという言葉も初めて知ったし、考えが甘かったと思いましたね。

――本書では2009年の発症から、2013年に日比谷野外大音楽堂でのライヴで復活を果たすまでが記されていますが、今も腰の状態を維持するための筋トレやジム通いは続けているんですか?

 腹筋とストレッチは今も自宅で続けています。状態を維持できないというより、やってないと不安になるんですよ。いまは普通に動くことができますが、ヘルニアは完治することはないので。病院でも、手術後は痛みもなく体を動かして何でもやれてたのに、何年後かにやっぱり再発して再手術って人をたくさん見たんですよ。

 それと、ソチ冬季五輪を観ていてニュースで知ったのですが、フィギュアスケートのプルシェンコ選手が、腰のボルトが折れたのが原因で棄権したんですよね。ボルトってチタン製ですよ?折れることなんてあんの!?って。僕、ライヴ中にパフォーマンスで三点倒立をするんですが、今は痛みもまったくないのでそれも普通にできてるんです。でも再発したり、そういう激しい動きでもしボルトが折れたりしたらって考えるとめちゃめちゃ怖いんですよね。もう二度と手術したくないので。

  • ガラ
  • ガラ

――再発の恐怖とはこれからも一生闘っていく、という。

 僕、いまライヴ中でもコルセットつけてますよ。服の下から見えても大丈夫なカッコいいヤツをスタイリストさんに作ってもらって。それがないと、前屈みになったり身体を反らせた時に、そのままバキンッていっちゃいそうで怖いんですよ。……ほんと腰って、やった人にしかわからないんですよね。普通に喋れるし、骨折みたいにギプスはめたり包帯巻いたりするわけじゃないから。当時はあの痛みやつらさがなかなか人にわかってもらえなくて葛藤したし、だから本にまとめようと思ったのにはそういう理由もあって。

【次のページ】MERRYの楽曲のこと、メンバーのこと