貴女は夫が自分しか知らなかったら、幸せですか? 面倒ですか? 『妻しか女性を知りません』作者インタビュー

マンガ

更新日:2015/3/10

 当サイトでも連載中のコミックエッセイ『妻しか女性を知りません』が単行本化される。オビには人気コラムニスト、ジェーン・スー氏によるコメントがある。曰く、「こんな旦那さんと一緒になれたら幸せだな。少し面倒くさいけど」。

 主人公は38歳のサラリーマン、菅原純一さん。いまひとつ覇気がない印象はあるが、職場では昼休みに後輩たちからよく声をかけられるなど、いい人感がにじみ出ている。そして家に帰ると、かわいい妻と育ち盛りのふたりの子どもが待っている。幸せといってなんら差し支えない生活をしながらも、彼の心のなかに居座っている大きな屈託……。それはひとえに、彼が〈妻しか女性を知らない〉から! その悶々とした日常を読み進めると、「幸せそうだな」という思いと「やっぱ面倒かも」という思いがくるくると入れ替わる。まさにジェーン・スー氏のコメントどおりだ。

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 菅原さんの物語は、著者である漫画家・石原まこちんさん自身の体験をベースとしている。「僕自身が、妻しか女性を知らない男なんですよ」と堂々カミングアウトするまこちんさんに、そんな男の人生とは幸せなのか面倒なのかをうかがった。

――妻しか知らない男性にとって、女性とはどんな存在なのでしょうか?

 僕自身の体験でいうと、小学校4年生のときに女性観が決定づけられましたね。性教育の授業があって、子どもを自分の胎内で育てる女性の身体というのをはじめて知って衝撃を受けました。神秘的すぎたんです! そのときに女性という存在自体を神棚にあげちゃった。それまではカエルの死骸を女子に投げつけたりいたずらばっかりしている男子だったんですけど、女子とは一切しゃべれなくなりました。そこから妻とつき合うようになるまで、女性とまともに話した時間って合計で20分ぐらいじゃないかな。

――10数年間で20分ですか! 女の子を好きになることはなかったんですか?

 それが、すぐ好きになっちゃうんですよ。中学のときに片思いしていた女子がいて、僕の中では大天使様だったんですが、卒業後に飲み会で酔っぱらって全裸になったと聞いてショックでしたね。神棚にあげていた人が、いきなり堕天使になっちゃった。

 あと、高校のときに片思いしていた子からある日突然、『まこちんのUFOの話聞きたい』ってドライブに誘われたんですよ。びっくりしてついていったら、運転席に男がいました。僕は後部座席に乗ってずーっとUFOの話をしながら、それでも彼女は僕のことが好きなんだろうな~と考えていたのに、ふと座席の下にあったゴミ袋を見ると使用済みのコンドームが捨ててあるんです。つらかったですねぇ。そんな経緯があって、もう誰にもほどけないくらいカッチカチにひねくれちゃいました。

  • 石原まこちん

――主人公の菅原さんは、妻の〈元カレ〉の話を聞かされては悶々としていますね。パートナーが自分より経験豊富というのは、コンプレックスを刺激されるものなのでしょうか?

 うちの妻は同じ小中学校に通った幼なじみだったんで、つき合う前から、こじれまくっている僕のことをぜんぶわかってくれていたんです。当時、彼女は美容師として働いていたんですけど、とにかくモテていた。帰ってくるとその日に担当したお客さんの話をするんですが、それが男性客だと僕にとっては面白くない。『お客さんが●●っていうアーティストのCDがいいっていってたよ』といわれると『俺は●●だけは認めねー!』って言い返したり(苦笑)。花をもらうこともよくあったし、これは美容師をつづけさせておくとマズいぞ、って焦りました。でも、当時の僕はニート同然……。そこで一念発起して集中しまくって描いたのが『THE3名様』。おかげで漫画家デビューできました。

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