出版志望者必見! 『就職四季報』編集長が語る、2016年の就活戦線

公開日:2015/2/27

 例年、学生の人気企業ランキングでも上位に複数がランクインする「出版社」。コミックや雑誌と学生とも接点の多い業界のためか、今年も相変わらずの人気が予想される。だがしかし、いずれの会社も採用人員がほぼ一桁の狭き門、おまけになかなか採用実態が見えにくい面もあり、就職戦線はかなりの激戦となるのが常…果たしていまどきの出版業界の就職事情はどうなっているのか? 気になる業界の内側を「本のことならおまかせ!」のダ・ヴィンチニュースが直撃取材。第一弾は、就活生のバイブル『就職四季報』の森 智彦編集長に、いよいよスタートする2016年の就職戦線の特徴、そして出版業界の現状についてうかがってみた。

スケジュールの大幅変更に注意!長期化の可能性も大

—最初に、今年の就活で特徴的なことはありますか?

 スケジュール変更という大きな変化があるので注意してください。今までは12 月に広報解禁、4月に選考活動解禁だったのですが、2016年卒から広報解禁が3月、選考活動解禁が8月と後ろ倒しになりました。ただし、これは経団連に加盟している企業に適応されることになっていて、加盟していない外資系、あるいはIT系ベンチャーなどは関係ないんですね。

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—とはいえ経団連加盟といえばほぼ大手が入っているわけで、全体としては短期化するんですか?

 それが、逆に長期化すると予想されるんです。売り手市場が続く中で、企業にしてみれば早い段階からいい人材を確保しておきたいわけですから、早期のインターンシップに力を入れる企業が増えていて、某就職情報企業のデータによれば実施する企業が前年より2倍近くになっているとのことです。すでに外資やベンチャーは内定を出しているというところもあるようですし、全体的な動きが早まるために結果的には長期化すると。

—なんとタテマエの世界なんですね! ぶっちゃけ、インターンシップというのは、いわゆる「青田買い」だったりするんでしょうか?

 うーん、企業側は明言しませんし、選考と結びつけてはいけないことになっていますが、実際には繋がっていることはあると思います。もちろん、インターンシップに来なかったからといって採用対象外ということはないですが、あらかじめ募集枠の一部がインターンシップで早期に決まってしまうという事態は考えられます。

—だったら気になる会社があったら積極的に参加しておけ、と。

 少なくともデメリットにはならないでしょう。インターンシップ応募の段階で、企業研究や志望動機のまとめ、人事とのやりとりなど、本番の就活と同様の経験ができるのはプラスになるでしょう。例年、インターンシップは8月の開催が多かったのですが、今年は2月も多いようで、今、まさに実施されている最中です。2016年卒は後ろ倒しの元年なので、先輩の動き方にならって就活すればいいというものでもないですし、もし漫然と3月から始めればいいと思っているようなら、少し意識を変えたほうがいいでしょう。

気になる出版業界の状況は…?

—出版業界の人気というのは、今年も変わらないと思われますか?

 学生の志向にはいつもあまり変化がなく、例年、食品やマスコミ、金融などの有名企業に人気が集中します。今年もスケジュールが変わったからといって、あまり入れ替えはないと予想しています。マスコミの中でも出版の人気は高いですね。2015年卒の人気企業ランキング(文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所調べ)でも、16位に集英社、26位に講談社、29位にKADOKAWA、75位に小学館と、上位100社に大手が軒並み入っています。

―出版人気は相変わらずのようですが、業績の面では厳しい業界展望も出ていますよね。

 そうですね。弊社では『会社四季報 業界地図』という本を出していて、そこでは14年度後半から15年度と2年連続で出版業界の状況を「大雨」と予測しています。出版販売金額は9年連続で前年割れを起こしていますし、スマホがこれだけ普及する中で、消費者の時間の取り合いになり読書離れも進んでいますし、業界的には正直厳しいと思います。

—「大雨」ですか…。

 はい…。ですから就職を希望するなら、「それでもいいから出版に携わりたい」という情熱がないとまず難しいでしょう。そもそも、就職倍率的にも高いですから、単に「漫画が好きだから」くらいの意識では厳しい。先日もセミナーで相談にきた学生に「出版社は情報が出てこないので、実際の社員などに会って話を聞いたほうがいい」とアドバイスしたんですが、「そんなことしないといけないんですか」と恥ずかしそうにしていて。それくらいできないレベルではお話にならないでしょう。

—情報がなかなか出てこない…たしかに『就職四季報』でも、KADOKAWAをはじめ数社しか出ていないんですね。

 本誌は企業からいただいたデータを元に作成しているんですが、残念ながら、集英社、講談社、小学館の3社にはあらためてお願いもしているものの、なかなかご協力いただけていないですね。もちろん採用人数が少ない中で、応募者は多数いますから、情報を載せることもないというのはあるのでしょう。ただ我々としては、出版希望の学生さんにも『就職四季報』と『会社四季報 業界地図』は是非おすすめしたいんです。読むことで社会の相場観みたいなものが掴めるので、少し視野が広がると思います。実際、編集を希望して出版社に入っても経理に配属されることもありますし、その他の業種でも広報なら社内報などの編集に携わることができることもあるわけで、業界だけにこだわらずに、職種にも目を向けたほうが可能性は広がるはずですから。

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