なぜ昨日まで大好きだったキャットフードを突然食べなくなるの? 猫のすべてが分かる本
公開日:2015/3/1
猫の気持ちは分かるようで分からない。実際、飼ってみるとそう思う瞬間に何度も出くわす。あるときはうれしそうにすり寄って来たかと思えば、突然、何を思ったのかキレ始めたりする。喜ぶと思って買ってきたベッドには興味を示さず、その商品が入っていた箱の中へとたんに入ってしまう。
こいつ何考えているんだろう……と思うのもしょっちゅうだが、猫の行動は「よく観察すれば分かります」というのは、書籍『ネコの気持ちがわかる89の秘訣』(SBクリエイティブ)である。獣医師の壱岐田鶴子さんが書いた同書は、私たち人間が猫とふれあう中での疑問に、答えやヒントを提案してくれている。
例えば、冒頭でみせたベッドのくだり。猫はとにかく箱へ入りたがるのだが、その理由を同書は「野性時代のなごり」だと語る。家畜として人間と生活する前、外敵から身を守るために崖や木々の割れ目で過ごしていたという猫。じつは、高い場所に登りたがるのも同様の習性であり、相手の視野から外れる代わりに、こちらからは見通しがよい場所は安心するという。
ただ、せっかく買ってあげたベッドはどうしても使ってもらいたいというのが、親心というものだろう。そのときは、猫がかねてより使っていたタオルなど、匂いのしみついたものをベッドにそっと置いてあげるとよいそうだ。これは、猫が用を足すトイレにも似たことがいえる。新しい砂を用意すると慣れないからか、トイレになかなか行きたがらないときもあるが、以前から使っていた砂を少し混ぜてあげると、自然とまた足を運ぶようになる。
また、これまた猫の飼い主あるあるかもしれないが、昨日まで好きだったはずのキャットフードに、あるときふと見向きもしなくなるときもある。大量に買い溜めたフードが「無駄になっちゃうよ……」とガッカリする瞬間ではあるものの、その理由は諸説あるそうだが、同書では「意図的に同じ獲物ばかりを食べ続けない」という猫の習性を引き合いに出している。
猫は自分の摂取カロリーを大まかに把握して、必要なエネルギーを自己管理する能力も備わっているという。そのため、同じ種類のフードを食べ続けることで自分で偏食気味になっているとみきわめて、他のフードを欲しがるときもあるそうだ。ただ、デリケートな性格から食器の汚れや周囲の騒音を嫌ったり、場合によっては体調不良の可能性もある。丸1日何も口にしないようであれば、病気やケガを疑う必要もあるそうだ。
表情やしぐさ、鳴き声で人とのコミュニケーションを図る猫。ときに奇々怪々にもみえる縦横無尽さも愛着を感じる一つの理由だが、いずれにせよ人間が歩み寄りその気持ちをくみ取ってあげる必要がある。同書では「猫には癒し効果や人間のストレスを緩和する効果がある」とも語っている。習性や猫の健康、行動の秘密が一冊まるまる凝縮されているので、飼い猫の気持ちをより深く理解するためにも、ぜひ手に取っていただきたい。
文=カネコシュウヘイ