『デート』『リーガル・ハイ』『相棒』…人気脚本家・古沢良太の新作『エイプリルフールズ』は、私たちみんなを“嘘”に巻き込む!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

「そうそう、コイツのこと私もそう思ってた!」誰もが思っていながら言えないことを主人公たちにポンポン言わせてすっきりさせてくれるのが古沢良太さんのドラマ。その古沢脚本のオリジナル新作映画『エイプリルフールズ』が4月1日に公開。映画公開に先立ち、山本幸久さんのノベライズ小説が発売されます。映画とは微妙に違うのでノベライズというより「小説版」というべきでしょうか。本作には、小説ならではの仕掛けがあるので、映画公開前にお読みになることをおすすめします!

エイプリルフールとはもちろん、4月1日には嘘ついてもいいよ、という風習のこと。もともとは騙された人をエイプリルフール(四月馬鹿)と呼んでいたとか。咄嗟についた嘘に嘘を重ねて真実を話せなくなるのは常道ではありますが、この物語では、あらゆる種類の嘘が総動員され、すべての登場人物が巻き込まれていきます。数々の嘘が暴かれる場面はミステリーの謎解きのような面白さ。互いに騙しあい、騙されあう人たち―—“エイプリルフールズ”というわけです。

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親に隠し事をしたい中学生からナンパのために医師を名乗る青年まで、登場する嘘つきの人となりもさまざま。UFOオタクのひきこもり中学生・野沢遥人のチャットから物語は始まります。チャット相手はメキシコのUFO研究家。毎年必ず4月1日の誕生日にUFOを目撃してしまう遥人、その写真を撮ろうとベランダから外を見ると幼なじみの理香が誘拐されそうになっているではありませんか。非力な中学生ながら犯人に立ち向かい、予想通り返り討ちに。そんな彼を救ったのは? 一方、連れ去られた理香は、池袋の中華料理店でお腹がはち切れそうになるほど料理を詰め込まれ、遊園地に連れて行かれます。犯人の要求は? 同日未明、暴力団組員の宇田川勇司は敵対する組長を襲撃するよう指示されます。また同日、別れた彼に祝ってもらった去年の誕生日を反芻するあゆみ。去年は彼にイタリアン・レストランに連れて行ってもらったのに、今年の私はどうしてひとりなの? 同時並行で事件が起き、何組もの人々が何カ所もの場面で交錯して行くコメディ。もつれにもつれた話はどう着地するのか。

嘘なんてグレーなものをテーマに据えながらこの痛快さ。ドミノ倒しのようなテンポの良さで相当ダークな嘘すらハッピーエンドに持って行ってしまう展開は、ハワード・ホークスやフランク・キャプラが撮った古き良き時代のロマンチックコメディを彷彿させます。考えてみれば原作者こそがいちばんの嘘つきなのではないでしょうか。『リーガル・ハイ』なんて、法廷でどれだけ嘘をつけるか、いやいや、詭弁を弄せるかって話でしたし、『デート』も主人公の身分詐称からストーリーが転がっていったんでした。本作『エイプリルフールズ』では、さらにもうひとり“小説家”という嘘つきが登場し、恵比寿ガーデンテラスの裏あたりのどこの行政区かわからない路地や、双子の占い師の会話で不思議なリアル感を感じさせてくれます。このような嘘の名手、ストーリーテラーの妙手にすっかり騙される、私たち読者こそが“エイプリルフールズ”なのかもしれません。映画とは一味違う小説版に注目です!

文=遠藤京子

エイプリルフールズ』(古沢良太:脚本、山本幸久:小説/ポプラ社)