ゾンビがはびこる秋葉原で繰り広げられる、女子高生のほんわかライフ ―いま、ゾンビ×コメディがおもしろい!

マンガ

公開日:2015/3/10

 「ゾンビ」という存在は、古くから映画や小説、ゲームなどの分野で、“人間を襲う脅威”として描かれてきた。生ける屍である彼らに理性はなく、本能むき出しで人間を襲う。ゾンビに傷つけられた人間は、その傷口から感染し、自らもゾンビになってしまう…。と、このように、「ゾンビは恐ろしいもの、すなわちゾンビが登場するのはホラー作品」という共通認識があるように思う。けれど、ここ最近、その常識を覆すような作品が続々登場している。

 どのような作品かというと、ゾンビにコメディ要素をプラスした、いわば「ゾンビコメディ」だ! ゾンビとコメディって、食べ合わせが悪そう…と思われるかもしれないが、実は案外そうでもない。では、いったいゾンビコメディの魅力はなんなのか、具体的な作品とともに紐解いてみよう。

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ゾンビが出たので学校休み。』(むうりあん/竹書房)は、長野から東京に修学旅行で遊びに来ていた4人の女子高生が、謎の異常気象によって生まれたゾンビがひしめく秋葉原に閉じ込められてしまう、というストーリー。これだけ見ると、よくあるパニック映画・サバイバルモノのニオイがぷんぷんするが、本作で描かれるのは、家電量販店に籠城し、そこでまったりと生活する女の子たちの姿だ。

 オタク気質を備えた彼女たちにとって、秋葉原の家電量販店なんて、まさに宝の山。ゲームを楽しんだり、コスプレ合戦に勤しんだり…もうやりたい放題だ。その様子からは、ゾンビに対する恐怖心が微塵も感じられない。とはいえ、時折訪れるゾンビの脅威。けれど、舞台は秋葉原。そこに存在するゾンビも“オタク”ということで、コスプレ姿やアニソンで巧みに誘導し、彼女たちは事なきを得る。

 あくまでも思い思いに日常生活を満喫する彼女たちの暮らしぶりは、非常に楽しそう。まるで永遠に終わらない合宿の夜のように、みんなで騒がしい時間を過ごす。本作におけるゾンビとは、“日常生活の楽しさ”を際立たせるためのスパイスなのだ。そう考えると、いくらかゾンビたちが不憫な気もしてくるような…。

 また、『シカバネ★チェリー』(こなみ詔子/秋田書店)では、なんと主人公の女子高生が、ひょんなきっかけからゾンビになってしまうという、トンデモ設定が描かれる。この場合のゾンビは、見た目は健康な人間そのもの。とある薬の効果により、絶えず細胞が新鮮な状態を保ち、怪我をしても瞬時に再生してしまう。ただし、心臓だけが止まっている状態で。

 そんな主人公が、“大のゾンビ嫌い”である男子に恋をしてしまったから大変。彼に接近し仲良くなるものの、自分がゾンビである事実は絶対に打ち明けられない。打ち明けられるわけがない(普通に考えれば、ドン引きでしょ)。でも、薬の効果が切れてしまったら、本当の死が訪れる。だったら、想いだけでも伝えなきゃ…。設定は奇天烈なものの、まさに、ピュアなラブストーリーだ。

 この作品におけるゾンビは、恋愛における“壁”の象徴だろう。恋愛作品では、主人公の恋が叶う可能性が低ければ低いほど、ふたりを阻む壁が高ければ高いほど、読者は感情移入してしまう。そういう意味において、主人公がゾンビになってしまうという設定は、非常に効果的だと言える。効果的過ぎるという声も聞こえてきそうだが…。

 このように、意外と相性が良さそうなゾンビとコメディ。もはや、物語に恐怖をもたらすだけがゾンビの役割ではない。これらの作品を読めば、あなたもゾンビの魅力に感染しちゃうかも!

文=前田レゴ