筋肉ムキムキOLがかわいい！　『女の友情と筋肉』KANAインタビュー

『女の友情と筋肉』1巻（KANA/星海社）

　人よりちょっぴり筋肉ムキムキのアラサー女子の恋や友情を描いた漫画が今、話題だ。今年1月に第1巻が出版された『女の友情と筋肉』（KANA/星海社）に登場するのは、身長189cm＆100m走10秒8の商社OLや、身長186cm＆ソフトボール投げ85mのアパレル販売員。日々仕事に励み、女同士（マッスル）でパンケーキを食べながら恋の悩みを相談し、と懸命に生きる彼女たちの日常は瞬く間に反響を呼び、発売後すぐに重版がかかった。そもそもなぜ筋肉なのか。その人気の秘密はどこにあるのか。著者のKANAさんに聞いてみた。

――この漫画は“筋肉モノ”、と言っていいのでしょうか？　とはいえ、見た目は筋肉だけど、中身は普通のアラサーOLと同じように悩んだり笑ったりしていますね。

【KANAさん（以下、KANA）】「筋肉ムキムキの力持ち設定から入ったというより、先にビジュアルのほうが決まっていたんです。最初は、このキャラクターたちのイラストでLINEスタンプを作って、その宣伝のために4コマをTwitterで公開していました」

――なぜ筋肉のスタンプを……？

【KANA】「女性同士で気持ちが伝わるものにしたいと思った結果、気がついたら筋肉になっていました」

――……？

【KANA】「女性がよく使う、ふわふわした白くて丸い感じのスタンプだとありふれていますし、そういったスタンプは男性に向けて送るのであって、女性同士のもっと正直なコミュニケーションやはげまし合いに使えるスタンプを作りたくて。それで、なんとなく浮かんだのがマッスルでした（笑）。試しに少し描いてみると自分でも元気が出る感じがしたので、そのまま勢いで一気に40個描き上げました」

――筋肉のパワーは計り知れないですね。とはいえ、主人公の女性3人（イオリ、マユ、ユイ）は、毎日会社で働いて、同棲している彼氏と喧嘩して、とマッスルという点をのぞけば、普通のアラサー女性と何ら変わりないですよね。

【KANA】「彼女達は一見超人のように見えますが、中身は普通の女の子ですから。漫画を読んでいるアラサー女性が普段悩むようなところで悩み、傷つくところでは同じように傷つきます。もちろん間違うこともあります。ムキムキで、空を飛んでいるシーンもありますが、ヒーローのような特別な存在ではないんです」

――そうなんですね。主人公3人のそれぞれの彼氏たちは、彼女らのどういうところが好きなんでしょうか？　彼氏たちは特に筋肉フェチとかそういうわけではないですよね。

【KANA】「あまりムキムキなところは意識していないようです。最初は驚いたと思いますが、もう慣れてしまっていて、半年に一度ほどふと『いや、筋肉すげえな』、『そういえば俺の彼女って筋肉質だな～』と一瞬思う程度です」

――なるほど、慣れ……。

【KANA】「みんな年単位で付き合っているので、きっとほかに魅力を感じる部分があるんでしょうね。それぞれ具体的には、イオリと付き合っているユウヤは、イオリの実は気が小さいところが好き。マユと付き合っているマサノブは、マユの精神的に強いところが好き。ユイと付き合っているヒロユキは、ユイの安定しているところに惹かれています。あくまでも、彼女たちの持つ内面に魅力を感じているんです。だから今後は、イオリたちの内面にあるかわいい部分が見えるような4コマをもっと描いていきたいです」

――彼女たちは、女の子らしい乙女な部分がありつつも、健気で心が強いですよね。仕事やプライベートでうまくいかなくても、前向きで。

【KANA】「根本的に性格が明るいというのもありますが、彼女たちも落ち込むことはあります。落ち込むときは落ちるところまで落ちて、最後はたいてい体を動かして筋トレして、気持ちを切り替えています。自分の気持ちに正直でいることと、健全な肉体がうまく繋がっているようです。あの筋肉は、健康の最終形態なのかもしれません」

　自分の気持ちに一生懸命で、清く正しい筋肉ライフを送る彼女たちを見ていると、その健気な姿に「応援したい」という気持ちと、「元気をもらえる」という気持ちの両方が浮かんでくる。この気持ちは、いわゆる“アイドルを応援するときの心情”とよく似ている。ムキムキだけど乙女、ムキムキだけどアイドル、ムキムキだから健康。『女の友情と筋肉』は、そんな漫画である。

取材・文＝朝井麻由美

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