獄中結婚した“木嶋佳苗”は、なぜモテる? 過激なポルノ私小説『礼讃』でその謎が明らかに!

文芸・カルチャー

更新日:2021/6/17

 ここ数年、ホリエモンの獄中メモなど、刑務所にいる受刑者の言葉が支援者の手によりブログ等で発信される機会が増えてきた。ことの善悪は別にして、彼らが獄中で何を考えどう過ごしているのか、自らの罪にどう向き合っているのかを、ほぼリアルタイムで垣間見られるという現象には正直そそられなくもない。こと世の注目を集めた受刑者のものなら、なおのことだろう。

 一連の婚活詐欺殺人で世の女性たちから総バッシングをくらった木嶋佳苗被告も、その意味では非常に興味深い存在だ。彼女は2013年12月24日付けで「木嶋佳苗の拘置所日記」としてブログを立ち上げ、翌年6月からは有料ブログで自身の生い立ちから振り返った自伝的小説「礼讃」を発表。裁判員裁判で死刑を求刑された受刑者による有料ブログとは、好奇の目を逆手にとった強気にも驚くが、問題はその内容だ。早熟な子ども時代、親との確執、過激な性描写等を克明に記したその物語は、実に大学ノート41 冊にもわたるボリュームだったという。この自伝的小説は、先ごろ『礼讃』(木嶋佳苗/KADOKAWA角川書店)として出版された。書籍化を機に、木嶋自身が「自分のこと」と認める物語の全貌が、真の意味で白日のもとに晒されたかたちになる。

advertisement

 まず驚かされるのは、木嶋の巧みな文章力だろう。幼少期から父に読書を推奨されたため、その読書量は相当なものらしく(8歳で漱石にはまり、将来「高等遊民」になりたいと考えたらしい)、感情表現や描写力はなかなかのもの。主人公「木山花菜」の姿を借りて、木嶋佳苗本人が歩んできた道のりが子細に描かれていく。8歳で来た早すぎる初潮、父や祖父とのファザコン的関係の一方での母からのモラハラと暴力、高2の夏の初体験と人生を狂わせた事件…ポルノまがいのセックス描写とブランド菓子やレストラン、高級ブランドの服や車の名前がミルフィーユのように淡々と積み重なっていく物語世界は、どこか異様で圧倒的だ。