「読んだ本のことは語ろう」 読書において重要なこととは?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/20

あなたは何のために本を読むのだろうか。楽しむためでもあるし、学ぶためかもしれない。では、学んだその先に得た知識はどうするのか? 人生を豊かにしてくれるかもしれない。けれど、それを他人と分かち合ってみてはどうだろうか。今よりもっともっと充実した日々になるかもしれない。

マインドマップを日本に紹介した神田昌典氏の著書『バカになるほど、本を読め!』(PHP研究所)。この本のタイトルを鵜呑みにしてはならない。ただ数を読むことを進めているのではない。本から得た知識を“アクション”へつなげようという提案だ。

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朝活や読書会は盛んに行われているが、目的を持って参加している人はどれくらいいるのだろうか。大勢で本を読むのは、もちろん様々な視点を知るためにある。けれど、あなたが読書会に“目標”を持って参加するなら、その会はもっと有意義になるはずだ。

たとえば「仕事のヒントを見つけたい」「上司の行動の裏を知りたい」など。ごく個人的な目標でもいい。もっといえば、目的のある読書会を自分で開くということもできるのだ。

本書には、震災後に開催された読書会について紹介されている。大規模災害に加え、原発事故という未曾有の事態に日本中がパニックになった。

そのときに開かれたのが、「原発関連の本を読む」という読書会。会を呼びかけたのは、IT会社勤務という、原発とはまったく畑違いの人だった。最初はたった6人。放射能について、都市の災害対策について。それぞれ持ち寄った本を読み、語り合った。その結果、テレビやネットの膨大な情報に振り回されていた状態から“体重が戻ってきた”体験をしたという。

原発という複雑で高度な存在に対して「自分の行動なんか取るに足らない。何もできないのではないか……」。そう思っていた読書会のメンバーたちは、会を通じて、自分たちなりにできることを探し当てることができたという。

けれど、地域貢献や社会的問題など大上段なテーマでなくとも構わない。仕事に関係する業界の勉強。企画の出し方・販促方法など、社内でもできる。特に上司と同じ本を読むことは「共通言語」を持つことになる。日頃の会話の食い違いをなくすことにもまる。またご近所さんとともに、「人が集まるバザー」について学ぶのもありだ。

そしてこの本で、まさに目からウロコな記述は、“読んでいない本について堂々と語る”という項目。要約するとこのような意味だ。

——一冊の本の重要な部分は4~11%。あとは、本論を補足するエピソードなど。ただ人は自分の読みたいように読んで、自分に良いように解釈する。
極端にいうと、1ページしか読まなくとも、自分ならではの意見を持ち、アイディアを生み出せれば良い。むしろ本を読んでも、自分の意見を持たない方が問題——

また本を読まずに参加する、読書会のスタイル、ハイスピードで本に目を通すフォトリーディングなども紹介する。一言一句逃さず読むことだけが読書ではない。そこからなにかアウトプットしてこそ読書に意味があるのではないか。

誤解を与えてはいけないが、著者は「楽しむための読書」も進めている。良質なエンターテインメントには、哲学があり、世の中の本質を学んでいることになるからだ。

「本はひとりで読むもの」「読まずに語るべからず」そんな読書の常識を取り払うような爽快な一冊だ。この本を読むと読書がますます楽しくなってくるだろう。

文=武藤徉子