算数の素養を小3までに身につけさせる方法 【算数五輪金メダリストを育てた母親が指南】

出産・子育て

更新日:2015/4/14

 脱ゆとり教育で理数熱が高まっている。算数は積み立て教科のため、小学3年生までに基礎となる正確な計算力をつけたほうが良いといわれる。ベネッセ教育総合研究所が実施した調査によると、算数を「好き(とても好き/まあ好き)」と答える児童は学年が上がるごとに減少。なかでも小学4年生で下げ幅が大きくなっている。とくに、計算力が弱い子どもほど、算数を「嫌い」と感じる傾向がある。桁数が増加し、わり算・小数が登場する小学3・4年生までに基礎固めをしておくのが、子どもを算数嫌いにしないポイントのようだ。それどころか、しっかりと基礎固めをしておくことで「算数エリート」の道を拓くことも可能だと、『「算数が得意な子」にするために親ができること』(和田聖子/ぱる出版)は断言している。

 算数エリートの子どもといえば、地頭が良かったり、遺伝的に数字に強かったり、医師や科学者など親自身に理数系の素地があったり、幼少時からエリート教育にお金をつぎ込める裕福な家庭育ちだったりといったイメージがあるかもしれない。しかし、本書では、親の働きかけ次第で、一般サラリーマン家庭でも算数エリートを生み出せるとしている。算数が苦手な母親でありながら、子どもをジュニア算数オリンピック金メダリストにした著者だけに、説得力がある言葉だ。

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 本書によると、小学3年生までに正確な計算力をつけ、算数エリートの下地をつくるためにまず必要なことは、「子どもといっしょに楽しんじゃおう」という親自身の意識改革。親の「楽しい」は、必ず子どもに伝わる。子どもの「コーチ」になるというより、共に学ぶ「パートナー」として寄り添うのだ。算数オリンピックの歴代金メダリストはじめ、算数エリートに共通した特長として、「数字問題を解くことが好きでたまらない」「おもしろくて仕方がない」といった“算数(数学)が趣味”的な感覚を持っていることが挙げられるという。基礎固めの段階で、算数に対するポジティブな価値観を親子で共有しておきたい。

 親子で楽しみながら勉強をする場は、机やテーブルの上に限る必要はない。親の意識改革によって、普段の生活でできることが見えてくる。近所のスーパーではいっしょに夕飯のメニューを考えながらかごに材料を入れ、精算までに合計金額を計算してもらう。計算デビューは子どもが選ぶ駄菓子で実践すると良い。この際、「円」の単位付けを徹底させておくと、テストで単位抜けなどのケアレスミスを減らせそうだ。材料を手に取って、重さを体感させておくのも良い。ケーキやピザを分ける際は、分数や百分率の概念を教える絶好の機会でもある。電車の切符では、4つの数字で「メイクテン(テンパズル)」。階段を上るときは、一段ごとに素数を数え合う。家事をする際は算数クイズの出し合い。子どもの算数レベルが上がり、親の手に負えなくなってきたら、「考えるふり」だけして解はすべて子どもに言わせると良い。正誤を徹底するより、難しい問題を解きたくなる気持ちを育てることが、算数エリートへの門を開かせる。

 わが子を小学3年生まで「お母さん塾」で育て、ジュニア算数オリンピック金メダリストに仕立てた著者は、「子どもの才能は平等であり無限大」だと信じて疑わない。短い子育て期間の中で子どもが夢中になれることを見つけ、引き出していけるのは親しかいないと、現役子育て世代にメッセージを送っている。

文=ルートつつみ