メタルヘッズたちに捧ぐ。今こそ学びたい「メタル英語」とは?

音楽

更新日:2015/4/16

 メタルという一つのカルチャー。音楽のいちジャンルであるというのが一般的な見方ではあるが、その内実は一晩では語り明かせない程に深い。音楽的な側面、様式的な側面、そして、メタルを軸に関わり合う人々が連なる群像もまた、一つの側面である。

 かつては一部から閉鎖的とも見られていたメタル界だが、今、BABYMETALとして戦い続ける3人の少女たちの活躍によりまばゆい程の光が当てられている。日本語とメタル、そして少女ならではの愛嬌をまとった彼女たちのステージには、彼女たちが生まれ育った日出づる国・日本の人々だけではなく、国籍や言語という固定観念すら超えた様々な人々が集う。

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 その核にあるのはやはり、メタルという世界共通言語。そして、もう一つの世界共通言語である“英語”が介在している。少女たちが今、何を思うのか。少女たちに思いをはせる様々な人々は今、どんな思いを抱いているのか。その現象を知るために英語への興味を寄せる声が、にわかに高まっているのも事実である。

 メタルを知るには英語を知らなければならない。義務教育でもさんざん学んだはずなのに、いったい自分は何をやっていたのか……と、落胆に打ちひしがれる瞬間もあるが、翻訳サイトやアプリに頼らず、英語を理解するために何をすべきか。答えは単純で、メタルから英語を学べばいいのだ。

 彼女たちの現象をより深く知りたい。それでも英語が分からないと焦燥に駆られるメタルヘッズたちに一冊の本を紹介したい。

 表題はずばり『メタル英語 Metal English/Japanese』。著者の十 tetsu(ジュウテツ)さんは、ギター片手にメタルでの世界進出を夢見た先で英検1級を取得、TOEIC975点を獲得した猛者だ。留学先で英語が伝わらなかったジレンマをバネに、雑誌から使えそうなフレーズをこつこつ学び取り「メタル英語」の講座まで開講するようになったという。

 では、十 Tetsuさんが一冊にまとめた「メタル英語」とは何なのか。ライブやバンドメンバー同士での交流など、目的別に細かく分けられているのだが、まもなくツアーやフェスの季節を迎えるということで、遠く離れたファンと共感をおぼえるために使えそうなフレーズをいくつか紹介していきたい。

The Haunted turned my life around.
―ホーンテッドのお陰でオレの人生は変わった。

 彼女たちの存在を目の当たりにした人たちの中でも、よく聞かれる言葉だ。文中のturn one’s life aroundが「〜のおかげで人生が変わる」にあたる。例文の主語はスウェーデンのメタルバンドであるザ・ホーンテッドだが、例えば、たった一言「BABYMETAL」と置き換えればそのまま使える。

I got goose bumps when I first heard Judes Priest.
―初めてジューダス・プリーストを聴いたときは鳥肌が立ったね。

 シンプルに興奮を伝えるにはうってつけの一言。goose bumpsは「がちょうの肌のぶつぶつ」すなわち「鳥肌」を差すという。あえていうまでもないが、例文ではジューダス・プリーストが挙げられているが、文末を「BABYMETAL」へ変換すれば、初めて自分が出会った日の感情を相手へそのまま投げかけられる。

I love to play air guiter to “Battery”.
―“バッテリー”に合わせてエアギターするの超好き。

 文中の“Battery”とは、メタル界の生ける伝説・メタリカの一曲だ。play〜to…で「…に合わせて〜をする」という意味になる。もし彼女たちに合わせるのならば「play head-banging to “Head Bangya!!”」 とすれば、瞬間的な興奮をきっと分かち合えるはずである。

I can’t help singing along to “Rise” .
―“ライズ”聴くと絶対一緒に歌っちゃうよね。

 文中の〜along to…が「…に合わせて一緒に〜する」の意味。can’t help〜ingは「〜せずにはいられない」を差す。メタル界でもよく使われるsing alongは「一緒に歌えるパート」にあたるが、彼女たちの曲でいえば、文末に“Road of Resistance”を当てはめるのがふさわしいだろう。

 メタル英語により「世界と交流する人、世界に発信する人、世界に挑む人が増えたらもう言うことない」と願う著者。その願いは今、関わり合う人々の熱量をたよりに少しずつ足音を強めているようにみえる。好きこそものの上手なれとは古くから使われる言葉だが、心の片隅で必要に迫られた今、同書をたよりに英語への理解を深めてみるのはいかがだろうか。

文=カネコシュウヘイ