泣ける物語、壮大な世界観、迫真のバトル。大ヒットゲーム『消滅都市』の秘密を探る

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/20

 またたくまに350万ダウンロードを達成したスマホゲーム『消滅都市』。14︎年5月にリリース以来、、順当にユーザー数を伸ばし、この度の「ニコニコ超会議2015」にも出展する(4月25・26日/幕張メッセ)。快進撃を続ける秘密に迫るべく、制作したWright Flyer Studiosに直撃してみた。

▲スマホゲーム『消滅都市』大人もハマる奥深さ

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お答えいただいたのは、ゲームの制作者代表して、プロデューサーの澤智明氏とディレクターの下田翔大氏。まずゲーム誕生の経緯とは?

「いろいろなスマホゲームが増えているなか、お客様に新しい体験を楽しんでいただきたいと思ったのです。そのひとつがドラマ性、思わず引き込まれる物語を盛り込むこと。そして、アクションという、ダイレクトに快感が得られる仕様となりました」(澤氏)

そう、このゲームでまず驚くのは、横スクロール型のアクションゲーム。いわば、『スーパーマリオブラザーズ』のように、ジャンプやダッシュを駆使できるところが斬新だ。タップやスワイプという単純操作で、キャラを自在に動かすプレイは、爽快。

そしてもうひとつは、重厚なストーリー。3年前に消滅した都市から生還した少女ユキ。そして運び屋のタクヤが、ロストした街でユキを待つ彼女の父親の元へと届ける。このゲームでは、ロードムービー的なストーリーのほか、クエストにて随時待ち受ける敵とのバトルを楽しめる。

▲長年に渡るヒットゲーム『海賊王国コロンブス』もてがけた、敏腕プロデューサーの澤智明氏

大人もハマるストーリーの面白さ

「大人も楽しめるストーリーを目指しました。もちろん中高生でも楽しめるストーリーです。けえれど、ユキとタクヤのやりとりは、大人が読むとさらに深く読み込めるように工夫しています」とは、シナリオを担当した下田氏。

ストーリーは、性別を超えて引き込まれるようバランスを取っている。物語が展開するに従って、微妙に近づくユキとタクヤのロマンス的要素。そして消滅したはずの世界と並行して存在する世界謎解き的要素も含まれている。

重厚なストーリーに惹かれるプレイヤーも多く、この度スピンオフ作品がノベライズされた。『消滅都市』(原作・下田翔大、執筆・高橋慶、イラスト・ toi8/PHP研究所)。
壮大なストーリーだが、それはあくまで、ゲームのシナリオ。端的にユーザーに物語を伝える苦悩を下田氏が語る。

▲小説『消滅都市』(原作・下田翔大、執筆・高橋慶、イラスト・toi8/PHP研究所)

「14文字×2行。たったこれだけのセリフで物語を伝えなければなりません。テンポ良くプレイできるように、文字数には制限を設けました。そして、吹き出しの位置など、いかにかっこよく、多くの人に受け入れられる画面デザインにもこだわりました。澤は、特にこのユーザーインターフェイスにこだわりましたね」(下田氏)

「吹き出しの出るタイミング。これが少しでも遅いとイライラしてしまう。逆に早いと頭に入ってきません。ゼロコンマ何秒のペースで調整を繰り返しました」(澤氏)

▲吹き出しのレイアウト、表示するスピードには相当なこだわりがあったという

バトル・ドラマ・音楽一体となって感情に響く

映画と違ってゲームは、プレイヤー自身がストーリーを読み進める。途中で飽きさせては、ゲームを継続してくれない。もっと読みたくなるには、工夫が必要だ。そして、映画と決定的に違うのは、バトルアクションが設けられていることだ。

「どの地点でどれくらいの強さの敵と対峙するのか。ゲームバランスを設計する担当者と密に打ち合わせを繰り返しました。プレイヤーに成長体験を積んで、楽しいと感じてもらうことも大切だからです」(下田氏)

物語の高揚感、気分を盛り上げる音楽、そしてキャラをリアルに感じさせる声優のボイス。ゲームは様々な要素がすべて一体の総合的エンターテイメント。制作者がその全体のバランスに常に気を使っている。

そう、忘れてはならないのは、超豪華な声優陣。ユキ役は、花澤香菜さん。タクヤ役は杉田智和さんが担当している。さらに、クラブミュージックテイストの音楽も好評だ。すでにサウンドトラックが2つもリリースされている。

▲ディレクター下田翔大氏。ユキとタクヤの会話は自分の10代を思い出しながら執筆したそうだ

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