ひょっとして「週末うつ」? 週末になると昼近くまで寝てしまう人は要注意!

健康

公開日:2015/4/25

 「コンピュータが仕事を奪う」。数十年前からまことしやかにいわれてきた言葉である。パソコンだけではなく、スマホやタブレットも普及した現代。少なくとも今この瞬間は、全てコンピュータに置き換えられたという実感は得られない。むしろ、一人ひとりに求められる作業量が膨大にふくれあがったのは否めない事実だ。

 平日か休日か。必ずしも線引きがなされているわけではなく、携帯電話やスマートフォンはどこにいても私たちを呼び出し、電波が届く限りいつでもメール等を確認できる。そんな現代を「仕事がオフの時間に容易に侵食する時代」と指摘するのは書籍『休む技術』(大和書房)の著者、精神科医・医学博士として活躍する西多昌規さんである。

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 本来、生活を豊かにするための手段でもある仕事。しかし、休日を迎えても他人と比べることで「もっと頑張らなきゃ」と不安を抱えたり、経済的な事情を考えて悩む。著者はこれを「週末うつ」と表現しているが、例えば、下記のような症状がある。

・平日はきちんと起きられるのに、週末になると昼近くまで寝てしまう
・週末になると体調を壊してしまう
・せっかくの休みでも気分が晴れない
・休みの日でも仕事のことが気になって仕方がない  

 わずかでも当てはまる実感があるならば、ちょっとひと息、自分の生活スタイルを見つめ直すことへ時間を費やしてみるのもいいかもしれない。ところで、気になるのはその理由だが、著者はその一つに「孤独」を挙げている。

 休日はたとえ家族と一緒だとしても「孤独はつきまとう」と語る著者。おおむね仕事中であれば、少なからず誰かしらとの会話が生まれ、働くことで自分の存在感も得られる。一方、休みともなると予定もなく出かける相手もいない。家族との会話も少なく「それならば仕事をしていた方がいい」と考えてしまう。

 ある意味、極論ともいえる一例だが、改めて振り返ると思い当たる人もいるだろう。では、日常で「週末うつ」を防ぐために何を意識すべきか。その一つとして、著者は目の前の休日だけではなくその先も見すえて、「休みの予定を通年で考える機会」を持つよう提案している。

 休みに入る前がいちばん楽しい。大人から子どもまで「うすうす感じている共通認識」ではないかと著者は語るが、大型連休や夏休みの思い出をたどれば味わえる感情だろう。これは「喜びの物質」とされるドーパミンが活性化されるという、脳科学の見地からも伺い知れるという。

 しかし、なかには休日が定まらない人もいるかもしれない。そんな人に提案しているのは、平日にほんの数分でもいいので「好きなこと時間」を確保するという方法。カフェで身を落ち着かせて一服するといった「静的」なものではなく、トイレでお気に入りの動画に目を通したり、軽く運動してみるといったものでもかまわない。さらに、スケジュール上であえて空白を作り、時には「サボる」時間を作るのも有効だという。

 スポーツ界で「オーバートレーニング症候群」という言葉がある。これは、過剰な練習により疲労が回復せず、結果として成績やパフォーマンスが上がらないという現象である。毎日を忙しなく生きる人たちにも当てはまりそうだが、その特効薬は何より「休息する勇気」を持つことにほかならない。

 やる気があり過ぎるがあまり、やる気が失くなってしまうのは本末転倒だ。効率的なスケジュール作りやタスク管理ばかり話題にのぼる現代だが、あえて休むことを意識するのも大切なようにみえる。「読む時間すらないよ」と野暮なことはいわず、この本をたよりに“休む”ためのヒントをたどってみるのもよいかもしれない。

文=カネコシュウヘイ