「敷居が高い」を正しく使えていますか? 日本の美しい「大和言葉」で知的さと優雅さを身につける

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公開日:2015/4/29

 あなたは日本語を大切にしているだろうか。日本には「富士山」「桜」といった美しいものの代名詞がいくつかあるが、これに加えて遜色ないものに「日本語」が挙げられるかもしれない。

 日本語には3種類ある。近年、ビジネスシーンなどで頻繁に見聞きする「カタカナ語」。「山地(さんち)」「河川(かせん)」など中国語から取り入れた「漢語」。そして、「山(やま)」「川(かわ)」など訓読みで発音される「大和言葉」である。外来語では「スタート」、漢語は「開始」、大和言葉なら「はじめる」といった具合だ。大和言葉は、太古に日本の祖先が創り出した日本固有の言葉であり、『日本の大和言葉を美しく話す―こころが通じる和の表現』(高橋こうじ/東邦出版)によると、一音一音に日本人の感性が投影されているため、私たちの心に染みるのだという。

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 数年前の調査だが、文化庁による『平成20年度「国語に関する世論調査」の結果について』によると、【「美しい日本語」というものがあると思うか】という設問に「あると思う」と答えた人は87.7%と、じつに9割近くにものぼる。さらに【「美しい日本語」とはどのような言葉か】と問うと、6割を超える人が「思いやりのある言葉」を選択している。

 現代では、一見おしゃれな外来語や、造語能力に富む漢語に押されてはいるが、日本の風土の中で生まれ、人々の間で使われ育ってきた人肌感じられる情緒豊かな大和言葉は脈々と受け継がれてきた。どこかギスギスした現代社会でこそ、力を発揮しそうだ。

 例えば、前述の調査の中で【言葉の意味】の正誤を問う設問に「敷居が高い」という大和言葉が取り上げられている。人間関係にまつわる大和言葉はじつに多い。苦手な相手であっても、角の立たない言葉を使い円滑に事を進めようという先人の知恵の賜物だ。

 さて、この「敷居が高い」という言葉の意味を、あなたは正しく理解しているだろうか。

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「敷居が高い」の意味

【あ】相手に不義理などをしてしまい、心苦しくて訪問しづらい

【い】高級過ぎたり上品過ぎたりして入りづらい

(文化庁の調査では半数近くが誤答)
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 答えは【あ】。心苦しさのせいで足が上がらず、敷居が高く感じるという情緒深い慣用句である。本書では、心苦しさを感じる相手と出会ったり、連絡を取ったりするときは「敷居が高くて伺えずにいます。ごめんなさい」と素直に謝るのを良しとしている。

 人付き合いの中では、褒めそやされることがあるかもしれない。日本人の美徳の一つに謙遜があり、褒められると「いえいえ」「とんでもない」ととっさに否定してしまいがちだが、否定される側も否定する側もなんだかいい気分ではない。かといって、「ありがとうございます」と礼を言ってしまうとうぬぼれと捉えられかねない。こんなときは、「お買い被りを」「お戯れはそれぐらいで」「恐れ入ります」といった大和言葉が便利だ。

 ビジネスシーンで使えそうな大和言葉も多々ある。例えば、上司や先輩に、頼まれていた資料の提出を前倒しで要求されたとき。「もうすこし」(時間がかかります)では、ややぶっきらぼうな感じがするが、「しばし」(お待ちいただけますか)を使うことで、どことなくユーモラスな響きが相手の心を鎮める、としている。進捗状況を報告するときなどは「だいたい」に替わって「おおむね」や「あらまし」。相手にお願いする場面では、「手があいたら…」「お暇なときに…」に替わって「お手すきのときに…」。大和言葉特有の、すべての音節の母音が平等に響くという“歌”のような特長が、雰囲気を落ち着かせるのだ。

 「感動した」が口癖の人はときに「胸に迫る」を、「デート」を「逢瀬」に、「妥協」を「折り合う」に言い換えるだけで、使った人を知的で優雅な大人に見せる大和言葉で、あなたの生活に彩りを加えてみてはいかがだろうか。

文=ルートつつみ