渡辺謙トニー賞ノミネート! 『王様と私』の原作と歴史を辿る

芸能

公開日:2015/4/30

  • 王様と私

 2015年4月28日(火)に日本を代表する俳優・渡辺謙が、アメリカの演劇界で最も権威ある賞「トニー賞」の主演男優賞にノミネートされた。ブロードウェイ初挑戦の彼の舞台「王様と私」は、主演男優賞以外にも、主演女優賞、演出賞など9部門にノミネートされるという快挙だ。

 第69回トニー賞授賞式が開かれるのは2015年6月8日(月)。渡辺謙が見事主演男優賞を獲得することができるのか? その発表をさらに楽しむためにも、「王様と私」の物語に触れておく必要がありそうだ。

  • 王様と私

原作『Anna and the King of Siam』
「王様」のモデルは、タイ仏教の改革と列強諸国との外交に努めたタイ国王・ラーマ4世とされている。王がイギリスから「アンナ・レオノーウェンズ」を家庭教師に招き入れ、西洋の教育を子弟に行った。そして、アンナがこの体験を元に1870年に『The English Governess at the Siamese Court(シャム宮廷のイギリス人女性家庭教師)』を著し、3年後の1873年に『Siamese Harem Life(シャムの後宮生活)』を著した。

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 両書を元に、マーガレット・ランドンが小説『Anna and the King of Siam(アンナとシャム王)』を創作し1944年に発表。これが「王様と私」の原作である。しかし、アンナの著書には創作と誇張が多いとされており、タイには不敬罪(君主の一族に対し名誉や尊厳を害する行為により成立する犯罪)が存在するため、ミュージカルの上演などが禁じられている。

 原作では、夫を亡くしたイギリス在住の婦人が教育係として請われて、初めて東洋に足を踏み入れることになっているが、実際のアンナはインド生まれで生涯の大半をインド、東南アジアで暮らしており、東洋の文化にも慣れていた。また教育係ではなく、単なる英語教師を募集していたのを見て応募。ラーマ4世との関係もそれほど深いものではなかったと言われている。王太子(後のラーマ5世)が即位後、奴隷制を廃止するのはアンナの教育の影響のように描かれるが、単なる時代の流れとの見解がされている。

映画版「王様と私」
「王様と私」は過去3度映画化されている。1946年に公開された「アンナとシャム王」、1956年公開「王様と私」、そして1999年公開の「アンナと王様」。「アンナとシャム王」はアカデミー賞2部門、「王様と私」がアカデミー賞5部門を獲得しており、どちらも不朽の名作とされている。

「アンナと王様」は日本での公開が2000年のため、記憶に残っている方も多いだろう。こちらは主演にチョウ・ユンファとジョディ・フォスターを迎え、ミュージカル要素はいれずに映画化された。さらに、マーガレット・ランドンの小説ではなく、アンナ・レオノーウェンズの手記を元にしている。

 以上が、話題を呼んでいる「王様と私」の情報を大まかに纏めたものである。原作となった小説『Anna and the King of Siam(アンナとシャム王)』は日本語版が出ていないので読む機会もないかもしれないが、映画版は3作ともDVD化されている。トニー賞授賞式の前に映画で物語を知っておくのも一興だろう。

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文=リーズ