恋する女子の 脳内&リアルが同時進行! 実写映画も話題『脳内ポイズンベリー』がついに完結!

マンガ

更新日:2015/5/7

 『脳内ポイズンベリー』(水城せとな/集英社)は、主人公の頭の中の思考や記憶を擬人化、実際の行動と“脳内会議”が同時展開してゆく新感覚のラブストーリーだ。真木よう子、西島秀俊、神木隆之介ら豪華キャストが出演する実写映画が5月9日(土)に公開されるなど注目が集まるなか、4月24日(金)に待望の最終巻(5巻)が発売された。

 30歳のいちこはアーティスト肌な年下青年・早乙女に恋をする。そこへ、早乙女の先輩で過去にいちこと同じ経験を持つ年上男性・越智が登場したことで微妙な三角関係に発展して――。そんな危うい事態をさらに盛り上げるのが、この物語がいちこの生きる現実といちこの頭の中、2つが対になって進んでいく独特の設定だ。頭の中では擬人化された(しかもそれぞれ名前まである)5つの思考によって、何かが起こるたびにいちこをよりよい結果に導くための脳内会議が開かれる。どんな状態かというと、たとえば現実でいちこの前にケーキが置かれたとする。すると場面は頭の中に切り替わり、「美味しそう!(瞬間の感情)」「もう遅い時間なのに食べたらまた太っちゃう…(ネガティブ)」「3日前にダイエットすると宣言しています(記憶)」「でもせっかくのケーキ、食べなきゃもったいないよ!(ポジティブ)」「夜遅くに食べるのはさすがに危険だ。中間を取って明日の朝食べることにしよう(理性)」……なんてやりとりが繰り広げられるのだ。ある出来事をいちこがどのように感じ、どう考えたうえでその対応をしたのがすべてわかるから、いちこがひとつ決断するたびに私たちは共感せずにいられない。たとえそれが、相手やいちこ自身を傷つける切ない結果を招いてしまったとしても。

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 著者はドラマ化され、ヒロインの小悪魔っぷりが話題を呼んだ『失恋ショコラティエ』などで知られる水城せとな。登場人物たちのやりとりや会話のリアルさが彼女の作品の大きな魅力のひとつなのだが、それは今作でも炸裂している。この最終巻ではクライマックス直前にしてやっと、いちこはこれまでの経緯を友人のレイちゃんにすべて報告するのだが、そのシーンがもう怖いくらい超リアルなのである。2人の会話はもちろん、カフェで2人が食べているメニューからして女子の緊急ランチミーティング感満載。食器を片す音や他の客の話し声が一緒くたになった、ざわざわとした店内の音まで聞こえてくるかのようだ。

 学生時代のように、好きの感情だけで突っ走れるならなんの問題もない。けれど、いちこはもう30歳で、自分が独りで生きていけるタイプではないこともうすうす気づいている。本人の欲のなさとは裏腹に仕事は超順調だけれど、(少なくともどちらか一人が)大人の恋愛では、それが思わぬ障害になる時もある。いちこの本当の幸せのため、脳内の5人が下した決断とは。間髪入れない怒濤のストーリー展開も今作の魅力、5巻まとめて一気読みがおすすめです。

文=山﨑めぐみ

『脳内ポイズンベリー』(水城せとな/集英社)