「いいね!」を強要する上司に慰謝料を請求できるの?―弁護士ドットコムから書籍が発売
公開日:2015/5/13
会社という組織で働いていると、パワハラやセクハラなど、いろいろ理不尽な出来事に遭遇することがある。それは、弁護士から見ると、どうなのか。もし、裁判所に訴えたらどうなるのか。
8000人以上の弁護士の情報を集めたポータルサイト・弁護士ドットコム著の『「いいね!」を強要する上司に慰謝料を請求できるのか?』(扶桑社)では、知りたいけれど今まで誰も教えてくれなかった職場で役立つ法律の知識が掲載されている。特に、現代人ならではともいえるネットをめぐるトラブルは、読んでいて「なるほど」と思わされるものも多いだろう。
たとえば、我々にとって、SNSやネットの存在はあまりにも身近であるため、勤務中であるのにもかかわらず、こっそりツイートをしたことがある…という人もいることだろう。しかし、これはもちろん御法度。処分されることもあるから、注意が必要だ。約2年半の間、勤務時間中に2394回のツイートをした北海道の男性中学教諭は、減給10分の1(2カ月分)の懲戒処分を受けているという。内容は授業のアイデアや私的なことで、生徒の個人情報が漏れるようなことはなったが、内容ではなく、「勤務中」であることが問題となった。これは、公務員だけでなく、一般企業の社員にとっても同様。雇用されている労働者は皆、勤務時間中は職務に専念する義務を負っている。勤務先の許可なく、業務以外のことに時間を費やせば、「職務専念義務」違反になり、程度によっては、懲戒処分を受けることになってしまう。ツイート経験がある者は、誘惑に負けないように気を引き締めるべきだろう。
また、SNSといえば、「苦手な上司にFacebookのアカウントが見つかり、“友達”になってしまった…」という人もいるに違いない。おまけに、上司が投稿した写真や日記に「いいね!」ボタンを押すことを迫られて困っているというのもありうる悩みだ。そんなSNS上での強要は「ソーシャルメディア・ハラスメント(=ソーハラ)」という名称で少しずつ認識され始めているらしい。
ソーハラと呼べる行為をした上司に対して慰謝料が請求できるかどうかは上司の行為が、民法709条の「不法行為」にあたるのかどうかにかかっているという。そして、不法行為にあたるかどうかは、ソーハラ行為の具体的な内容や頻度、時間帯などの個別事情を総合的に考慮して判断されることになるようだ。たとえば、職場の上下関係を背景にして、上司が部下に「いいね!」を押すことを無理に迫ったり、プライベートに関するメッセージを一方的に送り続けたりするなど、SNSで通常想定されるやりとりを逸脱している場合には不法行為として判断され、慰謝料を請求することができる。さらに会社が漫然とそのようなソーハラ行為を放置していた場合には、会社の法的に責任を追及することもできるという。
また、昨今では、パソコン業務に対応できない人へのハラスメント「テクノロジーハラスメント(=テクハラ)」も問題視され始めている。現代のビジネスシーンでのパソコン業務は必須であるため、「こんな簡単なこともできないの?」という何気ない一言にストレスを感じる場合・感じさせてしまう場合もありうる。ハラスメントは、上司から部下へのいじめ・嫌がらせだけでなく、同僚や後輩によるものも含まれる。同僚や後輩によるテクハラが「他人に心理的負荷を過度に蓄積させる行為」として、違法と判断されることも十分に考えられるようだ。
会社をめぐるトラブルは時代とともに変化、多様化している。この本を読めば、もしかしたら、アナタの悩んでいたことに役立つ知識が得られるかもしれない。
文=アサトーミナミ