社会

“お金持ち=幸せ”は本当なのか? 「日本人は、世界一、お金のことを知らない」

 あなたはお金について、どのようなイメージを持っているだろうか。携帯性が高く売っているものならどれとでも交換でき便利だが、もしかしたら「お金=汚いモノ」というイメージかもしれない。『日本経済新聞 電子版』(2013年2月8日付)によると、ある投資教育を実践している教師が全国の中学・高校をまわるたびに「お金はきれいなものか? 汚いものか?」と問うと、生徒約500人のうち実に8割弱が「汚い」と答えるという。日本人は勤勉に働くとされるが、お金を強く求める一方で、お金を汚いモノとして避けてもいる実態が見えてくる。

 『なぜ日本人は、こんなに働いているのにお金持ちになれないのか? 21世紀のつながり資本論』(いろは出版)の著者である渡邉賢太郎は、元・大手証券会社の証券マンであり、08年リーマンショックを機に「お金とはなにか?」という問いに決着をつけるべく世界一周の旅に出かけ、各国における「お金」について見聞きしてきた人物。その結果、気づいたことは「日本人は、世界一、お金のことを知らない」という事実。「お金=汚いモノ」という誤解が、それを物語っているという。

 著者は世界を回る中で4種類の人々に出会う。それは、「幸せなお金持ち」と「お金持ちなのに不幸な人」、そして「お金がないのに幸せな人」と「お金がなくて不幸な人」。そして、これを分けるのが、お金を「道具」と捉えるのか「目的」と捉えるのかの違いだと気づいた。本来、お金とは、人の生活を便利にするために発明された「道具」である。それを、いつの間にか生きる「目的」にすり替えてしまい、お金を絶対の存在として盲信するようになった大半の人たちは、お金の多寡にかかわらず心が寂しい、あるいは焦燥感にかられるなど満たされない生活を送っているというのだ。

 お金を「目的」と捉える人たちは、お金を増やすのが至上目的であり、次のような考え方を持っている。

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・お金がないと幸せになれない
・自分の時間と交換して得るもの
・サービスや製品の対価として支払うお金はなるべく少ないほうがいい
・無意識下でお金を「面倒くさいもの」と考えている

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このように、総じて「ネガティブお金観」を持つ人が多いと分析する。

 一方で「道具」と捉える人たちは、人と人とを媒介する道具であり、本質的には無価値だと信じているので、次のように考える。

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・お金は信頼の媒介物であり、人と人との信頼関係を醸成する
・自らが生み出した付加価値の対価として受け取るもの
・お金を支払う=相手に自らの信頼を渡すということ
 →支払いは必ずしも安ければよいというわけではない

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このような「ポジティブお金観」を持つ人たちは、保有するお金の量にかかわらず、人生が幸福なのだ。

 お金は「他者の時間」を使うことができる。つまり、お金持ちは「他者を動かす“パワー”」を大量に持っていて、より多くの「他人の時間」を使うことができる。ネガティブお金観のお金持ちは、根本的にお金の持つ力を「他者を“支配”するためのパワー」のように捉えており、支配欲からいつでもお金集めに必死である。他者を「お金」を奪う、あるいは稼ぐための対象としているので、お互いの間に信頼関係を築けず、心が満たされないばかりか、長期的には他者の心と同時に最も重要であるはずのお金をも遠ざけてしまう。

 一方でポジティブお金観のお金持ちは、「お金」を自分と他者が幸せになる道具として使うため、お互いの間に信頼関係が築かれ、結果としてそこからお金が増えていく。元・証券マンである著者は、この実際を投資家と起業家との間で見てきたという。それは、たとえば「投機」と「投資」の違いに表れる。ネガティブお金観の投資家は、株価の推移のみに注目してお金を稼ぐチャンスがあればお金を投げ込み一喜一憂するが、ポジティブお金観の投資家はその会社が成長することに期待をして長期的な「投資」をする。投資した会社の価値が上がるということは、信頼が上昇するということ。投機と投資は同じく「利益を得ること」だが、投資家との間に信頼関係があるかないかで大きく違うのだ。倫理的にどちらが正しいという判断は下せないが、心も満たされた幸せなお金持ちのほとんどは投機をせず、投資をしていたと振り返っている。

 本書の最後では、資本主義世界の変質について触れている。従来、信頼は見えないものであったため、お金で信頼を測ったり、買ったりしていたわけだが、インターネットやSNSの普及で、購入前にサービスや製品の信頼度が見えるようになってきた。これからの世界は、お金を稼ぐために働くのではなく、他者との信頼関係を築くために働き、自らを成長させ、結果としてお金が稼げるようになるのではと予想している。

文=ルートつつみ



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