つい原作を読み返してしまう“謎本”の魅力

マンガ

更新日:2015/5/21

 『ガラスの仮面』は中毒性が高すぎる。何度も読んでいるのに、うっかり読み始めたら、もう他のことは手に付かない。忙しい時期には決して開いてはいけないマンガだ。が、ある本をきっかけに徹夜で通読することに……。いわゆる“謎本”の『「ガラスの仮面」究極研究』を読んだからだ。

 謎本とは、基本的には非公式。作品の謎を分析したり、物語の伏線を整理したりする本のことだ。90年代、サザエさんの謎本『磯野家の謎』がヒットして以後、一大ブームとなり、ジャンルとして定着した。中には単に人気作に便乗したものもあったが、本作は著者の愛がしっかり感じられる。

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 著者は、幅広い年代のマニア達で構成されるファンサークル「『ガラスの仮面』国際保存委員会」だ。そんな楽しそうなサークルがあったのか、とまず驚いたが、内容も驚きの連続。例えば、「速水真澄は北島マヤに、いったいいくら貢いだのか?」というテーマで、これまでのエピソードや時代背景をふまえて、かなり細かく計算したりしているのだ。だれもがツッコミを入れたくなる『ガラスの仮面』のご都合主義な部分をあえて真面目に分析していて、読みながらニヤニヤしてしまう。読後は、私のように改めて原作に立ち返りたくなるはずだ。

 最近では、公式ファンブックがより詳細になったこともあってか、一時期より謎本の数は減った印象だ。それでもヒット作は今なお続く。本作も期待の一冊であり、『ガラスの仮面』の魅力を再発見する機会になってほしい。

文=倉持佳代子/『ダ・ヴィンチ』6月号「出版ニュースクリップ」より